深部静脈血栓症・
肺塞栓症とは

深部静脈血栓症・肺塞栓症とは

当ホームページでは主に動脈の病気を説明しましたが、血管には動脈と静脈があり、時に静脈の病気が命にかかわることがあります。全身に血液を送る重要な役割がありますが、静脈は逆に全身からの血液を心臓に戻します。

深部静脈血栓症とは足の深いところの静脈に血栓ができる病気です。足の静脈は右心房、右心室を経由して肺動脈につながりますので、ここに血栓ができて肺まで流れていくと急性肺塞栓症という恐ろしい病気になります。足の血栓は色々な状況でできますが、数時間足をじっとしておくだけでも血栓は出来ます。

それが自然に解けずに、急に立ち上がった際などにはがれて肺まで流れていきます。エコノミークラス症候群と呼ばれるもので急に肺の動脈を詰まらせてしまうので(急性肺塞栓症)心臓がそれに耐えられなくなり最悪の場合は突然死します。急性肺塞栓症の血栓の殆どは深部静脈血栓症由来です。逆に深部静脈血栓症を早めに診断して肺塞栓症を防ぐことが重要なのです。

深部静脈血栓症・
肺塞栓症の検査・診断

深部静脈血栓症ではまず(多くは)片方の下腿が腫れて痛いことが多いです。痛みがなく軽度の腫れだけのこともあります。診断は血液検査で凝固のマーカーが上昇していること、下肢静脈エコーで多くは診断がつきます。
深部静脈血栓の診断がつけば肺塞栓症を起こしていないかどうか、心エコーで右心負荷があるかどうか、あるいは胸部の造影CTで肺動脈の血栓を確認します。

肺塞栓症では塞栓が小さいときは自覚症状がありませんが、塞栓が大きくなってくると息を吸うときの胸の痛み、息苦しさ、動悸、顔面蒼白、冷や汗、失神などが症状にあらわれます。
肺塞栓症は突然起こりますので、症状から肺塞栓症が疑われる場合にはすぐに検査を行い、治療を行う必要があります。胸部X線検査、心電図、血液ガス分析(血液に含まれる酸素の量などを調べる検査)などが行われます。

深部静脈血栓症・
肺塞栓症の治療

いずれの病態も、まずは血栓をこれ以上大きくせずに自然に血栓を溶かす(線溶)ことが治療です。これには血液をサラサラにして固まりにくくする「抗凝固薬」や、血栓を溶かす「血栓溶解薬」が用いられますが、いずれも出血しやすくなるので注意が必要です。
深部静脈血栓症で肺塞栓症がない場合は多くはしばらく下肢の安静と抗凝固剤の内服でよいことが多いです。

肺塞栓症を起こしている場合は通常入院での治療が必要となります。
肺動脈内にできた血栓の近くまでカテーテルと呼ばれる細い管を血管内に通し、圧力をかけて薬剤を放出する「カテーテル血栓溶解療法」のほか、血栓を吸い取ったり、血栓を砕いたりするような治療や、上記の治療法が選択できない場合には、外科的に血栓を取り除く手術がされることもあります。

深部静脈血栓症・
肺塞栓症の予防

肺塞栓症の予防では、足の静脈に血栓ができないようにすることが一番重要です。そのためには、歩くことが一番の予防になります。
足は第二の心臓といわれることがあります。立って歩く人間にとって、心臓から送り出された血液を足から心臓まで戻すには、歩行によって足の筋肉が静脈をマッサージして、血液を押し上げる補助ポンプの機能を果たしているからです。
また飛行機や車、電車での移動時など、長時間座りっぱなしで歩けない時などには、かかとを上げ下げする、足を組んで下になった側の膝を使ってふくらはぎ全体をマッサージするなど、足を動かすことを意識すると良いでしょう。