不整脈とは

不整脈とは

不整脈とは、心臓を伝わる電気刺激が異常な電動経路をとることで生じる心拍リズムの異常のことを言います。

不整脈が発生する主な原因は、冠動脈疾患、心臓弁障害、心不全、先天性心疾患などで、多くが心臓に起因する疾患です。
甲状腺異常や肺に病気がある人も、不整脈になりやすい傾向があります。
しかし、心臓病等に関係無く、老化や体質的なもの、ストレスや睡眠不足、疲労などによっても不整脈は起こりやすくなります。
心臓は1日に約10万回も拍動しており、心臓は時には規則正しくない電気信号により不規則な動きをしてしまう場合があります。つまり不整脈は誰にでも起こり得るのです。

主な不整脈の種類として、以下の3つがあります。
ただ、不整脈は常に自覚症状があるわけではなく、本人がそれと気づかないケースが少なくありません。しかし、徐々に病状が悪化するに従い、自覚するようになってきます。

早い脈(頻脈)

頻脈になると、ドキドキとする動悸が感じられるようになります。さらに脈が速まっていくと、心臓が全身に血液を送り出せない状態となってしまい、吐き気や冷や汗、意識消失等の症状が出てきます。

遅い脈(徐脈)

徐脈になると、フラッとしたり、めまいがしたり、意識が無くなって卒倒したりします。徐脈状態が長い間続くと、動作時に息切れがするようになります。

飛ぶ/抜ける脈(期外収縮)

期外収縮になっても自覚症状を感じないことが多いのですが、症状を感じる時は、脈が飛んだり、胸の周辺部分に不快感を覚えたり、胸が痛くなったりします。これらの痛みは比較的狭い範囲で起こり、あまり持続しない(数十秒以内)で解消します。

不整脈のほとんどは、実はあまり心配の無い、一時的なものが多いのですが、不整脈のなかには注意を要し、専門医による詳細な診断と、場合によっては適切な治療が必要となるケースもありますので、不整脈を指摘されたり、不整脈が気になったりした際には一度専門医を受診しましょう。

気をつけなければならない
不整脈

多くの場合の不整脈は心配の無い、一時的なものが多いですが、一部には注意を要する不整脈も存在します。
以下に、特に気を付けたい不整脈の症状をご紹介します。

失神症状

「何もしていないのにふらっとする」「急に意識がなくなる、失神する」といった症状が出た場合は最も危険です。
この場合、一時的に心臓が止まっているか、または極端な頻脈が起こっている可能性があります。

強い息切れ

脈拍が減り(1分間に40回以下)、体を動かす時に強い息切れを感じる場合、脈が遅くなり過ぎて心不全を引き起こしている可能性があります。

突然の動悸

「脈拍が1分間に120以上で、突然始まり、突然止まる」「まったく不規則に打つ」ような場合、病的な頻脈と考えられます。
脈拍数が150~200前後となり血圧が下がり、息苦しくなって冷や汗が出ます。

上記のような症状が出た場合、速やかに専門医を受診するようにしてください。
場合によっては心不全や脳梗塞を引き起こす危険性があります。

ただ自覚症状を感じにくい不整脈では、何が危険な不整脈か、心配の無い不整脈かをご自身で判断することは困難です。
不整脈がある場合、その原因は何なのか、もともと心臓に悪いところがないか、などを一度検査し、確認しておいた方がよいでしょう。

不整脈の原因

不整脈を引き起こす原因としては様々なものがあります。

ひとつは、何らかの病気が原因となり合併症として不整脈を起こしている場合です。
例えば心筋症や心臓弁膜症、心筋梗塞、狭心症、心不全といった心臓の病気によって心臓の筋肉に障害を受けることにより刺激伝導系に障害が生じ、不整脈が引き起こされることがあります。
また心臓以外の病気、例えば甲状腺異常や肺・腎臓・肝臓の障害などによって、ホルモンや血液中の電解質イオン、自律神経のバランスが崩れることで心拍数や収縮力の調整機能に影響が及び、不整脈が起こることがあります。

このような場合は、原因となっている病気を特定し、その病気に対する治療をしていきます。
ただ心臓病などの治療のために飲んでいる薬の副作用によって不整脈が生じることもありますので、どのようなお薬を服用されているかも確認する必要があります。

はっきりとした原因となるような病気が見つからない場合もあります。
例えば遺伝や体質として生まれつき刺激伝道系に異常がある場合や、加齢によって機能が低下していることがあります。
また高血圧、喫煙、過度の飲酒、過労や睡眠不足、精神的ストレスなどの生活習慣が原因となり、不整脈が引き起こされるようなケースもあります。

一言で不整脈といっても、引き起こされている原因は様々ですので、その原因に応じた治療をしていくことが大切です。

不整脈の検査

不整脈の検査

不整脈に対する検査として一般的なものは心電図検査です。
しかし多くの不整脈は発作的に起こるため、通常の心電図検査で異常が見つけられないときがあります。
場合によってはより精密な検査として、以下のような検査を実施することがあります。

ホルター心電図検査

携帯型の小型心電計を装着したまま帰宅していただき、24時間の心電図を記録する。
体を動かしている時や寝ている時に、心電図がどう変化しているのかが観察できる。

運動負荷検査

心電図の電極をつけたまま階段を上り下りしたり、自転車のペダルをこいだり歩行運動をすることで、運動によって不整脈がどう変わるかを調べる。

また心筋症や心臓弁膜症、心筋梗塞といった心臓の病気、あるいは甲状腺異常、肺や腎臓・肝臓の障害といった心臓以外の病気が不整脈を引き起こしている可能性もあるため、不整脈そのものの検査と並行し、胸部X線検査や血液検査、心臓超音波検査なども行う場合があります。

不整脈の治療

不整脈の原因でもお伝えしたように、不整脈の治療は原因によって様々です。
軽度の不整脈で自覚症状もないような場合、経過観察とする場合も多くあります。

喫煙や飲酒、過労などの生活習慣によって不整脈が引き起こされているような場合は生活習慣の是正を行い、他の心臓病、心臓以外の病気によって引き起こされているような場合は、元となっている病気の治療が必要です。

原因がはっきりせず、症状が強かったり危険性が高かったりすると、不整脈を抑えるお薬(抗不整脈薬)を処方することもあります。
こういった抗不整脈薬は、特に頻脈性不整脈に効果的です。
しかし、このお薬の副作用によって別に不整脈が出現する可能性もありますので、処方は専門医によって適切に行うことが大切です。

抗不整脈薬を処方しても不整脈が収まらず、また心不全などのリスクが高いと判断された場合には、以下のような非薬物療法が行われる場合があります。

ペースメーカー植込み手術

特に徐脈性不整脈に対し、広く一般的に行われています。人工のペースメーカーと電線を植え込むことで心臓の動きを補助し、規則的な正常のリズムに戻します。
ペースメーカーと聞くと大掛かりなものが想定されるかも知れませんが、実際には安全が確立されている低リスクの手術により植込みができます。
植込み後の生活に関しても、電磁波の影響などの注意は必要ですが、基本的には問題なく基本的な日常生活を送っていただけます。
日本では、年間4万個以上のペースメーカーが植込まれています。

カテーテルアブレーション手術

お薬で抑えきれない頻脈性不整脈において有効な治療です。
不整脈の原因となっている心臓の部位までカテーテル(細い管)を通して高周波の電流を流し、不整脈の原因となっている心筋細胞を凝固壊死させることによって不整脈を起こらなくします。
この治療方法では心臓組織のほんの一部のみを焼灼するため、心臓自体の機能には影響を与えません。

カテーテルアブレーション手術

植込み型除細動器(ICD)植込み手術

特に致死性の重症不整脈(心室頻拍、心室細動など)では、不整脈が生じると心臓の動きが無効になり心停止状態になってしまうため、ただちに電気ショックを行って不整脈を停止させる必要があります。
こういった致死性不整脈の治療のために心臓の動きを常時監視し、頻脈が検出されると電気ショックなどの治療を行う器械を植込む手術です。
ただし不整脈発作を予防したり、不整脈そのものを完治したりする治療ではないため、抗不整脈薬などを併用することが必要です。

これらの手術は入院していただく必要がありますので、当院では適切な医療機関へのご紹介を行っております。

日常生活の注意点

不整脈を引き起こす原因は様々ですが、生活習慣の中では過労、睡眠不足、運動不足、喫煙、飲酒、脂肪分やコレステロールの高い食事、ストレスなどが要因として考えられています。
もともとコレステロール値が高い人や、親族が心臓疾患にかかったことがある人、高血圧・糖尿病、動脈硬化などを患っている人も、不整脈を引き起こしやすいと言えるでしょう。
不整脈を予防するためには、これらのことを注意した生活習慣、食生活を心がけることが大切です。

不整脈のリスクについてお伝えしましたが、実際には体に害のない不整脈も多く、また危険な不整脈であっても、その多くは適切な治療によって治すことができます。
必要以上に恐れず、まずは専門の医療機関に受診してご自身の不整脈についてよく知ることからはじめましょう。