オンライン診療の振り返り

オンライン診療、以前は遠隔診療と呼ばれてました。最初は電話再診と一部の飛び飛びの動画を用いての診察で、今のようなリアルタイムの画像データの供与が乏しかった時代です。通信が3Gから4G、5Gとなりリアルタイム動画を送れるようになってから遠隔診療がオンライン診療という言葉に変わりました。現在、診療報酬上は情報通信機器を用いた診療で、リアルタイムの顔見せが必要な診療です。

遠隔診療は1997年から始まり、あくまで直接の対面診察を補完するものでした。対象はへき地の安定している患者さんでした。2003年にはへき地でなくても対面診療と適切に組み合わせることは良いとされました。2017年には保険者が実施する禁煙外来は遠隔診療も可、と柔軟な取り扱いになりました。2018年の診療報酬改定で初めてオンライン診療料等が創設されました。ただし対象は慢性疾患の初診以外の患者さんでした。

2020年からコロナが始まり、2月には電話等再診で処方をおこなうことが可能になりました。そして4月10日からは、あくまで時限的・特例措置ではありますが、電話や情報通信機器を用いて初診の患者さんを診ることが出来るようになりました。もちろん当該医師の責任の下で医学的に可能とした範囲内でのことです。3か月ごとに感染状況を見ながら継続の可否を判断するとのことでした。

当院でも2020年4月からオンライン診療をしていました。コロナが重症化していた時期は、医療機関を受診しただけでも、あるいは医師がいる診察室に入っただけでもコロナに感染するといった間違った考えから、受診控えがおきました。行くのが怖いので電話で薬だけ欲しいという方も多かったです。

今のようにラインを用いると簡単なのですが、当時は様々な理由から各社が進める独自のソフトを入れてオンライン診療を行っておりました。今のように抗原検査が一般的ではなかったので、喉が痛い、咳が出る方がオンラインで受診されました。ただし住所みたらすぐ近所。
喉をモニター越しに見てもはっきりしないし、聴診もできません。診察可能な範囲内で投薬し、改めての受診をお願いしていした。

そのうち血圧の薬が欲しいといわれる方もオンラインにやってこられました。普段かかりつけの方が続きでオンラインするなら当院に過去の診療録があるので良いのですが、初診の方の場合は他院からの診療情報提供書がある場合に限って行いました。糖尿病など血液検査が必要なものに対してはオンラインではやりにくいです。非接触型の血糖測定が一般的になればよいのですが、現時点では指先の自己採血で測定したものを検査してそれを判断するしかないようです。

オンライン診療をするには医師は研修を受けて、施設基準を届け出なければなりません。その研修でどんなオンラインは良い、こんなケースはダメと教わるわけです。

患者さんはクリニックに来て待つ必要はなく家にいて同じ診療ができるのですから非常に便利なわけです。オンライン診療の性質上、患者さんが予約をしてこちらから時間になると連絡をします。皆さん最初は自宅で待機してくれていたのですが、そのうち以下のような事態もありました。

プルるる・・
「○○さん、ビデオをオンにしてもらえます」・・「はい」、ハンドルが見えてもしや車内?「家に帰ったらまた電話しますね」と言うと、「止まってるから大丈夫ですよ、」、「いやダメですよ。」

「おはようございます」いい感じでコーヒー飲んで朝食中。飲食しているだけで一人であれば別に良いのですが。

ある人は「家だとWi-Fi環境が悪いので居酒屋に居ます、まだ飲んでないですよ。」とか

「○○さん聞こえますか?・・・」ずっと子供をあやしている。「○○ちゃん、ほら」とこちらの画面を見せて、一向に診察が進まない。

「○○さん、○○さん・・」・・ガーっがーっ、枕が見えて、CPAPつけて半分寝ている、など。

これらすべてはオンライン診療にはならず認められないので、あとであらためてビデオ通話をすることになります。ただし皆さんなかなかつながらない。お互い二度手間、三度手間になるわけです。普通にクリニックに来てもらい診察した方が明らかに早く物事が進んだということが多かったです。

令和5年8月1日でコロナの特例措置がすべて終了しオンライン診療もある程度制限されるようになりました。
オンライン診療は必ず顔を見ながらビデオ通話が必要で、電話での薬の処方はできなくなりました。

例えば医師が一人しかいない南大東島で患者さんが皮膚を見せて本島の皮膚科医がオンラインで診察する、あるいは経験豊富な医師が離島の医師に助言する、このような場合には飛躍的に進歩した現在の通信技術でオンライン診療が真価を発揮するのでしょう。1997年の厚生省(当時)の通知の通りです。

風邪ひいた、どこそこが痛い、血圧高い・・・、都市部には医者はどこにでもいるので、普通は近くのかかりつけ医を受診する方が医師も患者さんも良いはずです。

今回はごく普通の開業医である当院でのオンライン診療を振り返っての感想でした。