生活習慣病 患者さんへの説明~高血圧症~

血圧とは心臓が収縮して血液を全身に届ける際に血管にかかる圧のことです。通常太い血管の圧力は120/80mmHg、上と下(収縮期血圧と拡張期血圧)があるのは大血管に弾力性があるからです。もし大血管が鉛管であれば下の血圧はゼロになってしまいます。

心臓が120mmHgの力で収縮して血液が頭のてっぺんまで届けばそれでよいのですが、全身の血管が硬くなり抵抗が上がってくると120mmHgでは頭の先まで届かなくなり、自然と160や180mmHgで収縮するようになります。これが高血圧で、こうなると心臓をはじめ心臓周辺の大血管は120mmHg仕様に作られているので、心臓の壁に負担がかかり心肥大がおこり収縮するのに余分なエネルギーが必要です。また大血管が常に高い圧力でさらされるので傷み方が早いです。

現在は140/90mmHg(または、かつ)以上を高血圧症と定義します。ちなみに一昔前は収縮期血圧が「年齢+90」が目安とされていました。 1987年には旧厚生省が180/100mmHgを診断基準としていました。40年弱でずいぶんと基準が厳しくなったものです。

その根拠は血圧の値と病気の発症や死亡率との関係をもとに、世界中が同じ基準で定めています。脳卒中や心臓病を発生するリスクが2倍になることを根拠に定められた基準です。

血圧は心拍出量(血管内の血液の量)と末梢血管抵抗(血管の硬さ)の掛け算で決まります。要するに血液パンパン、血管カチカチ、だと血圧が高くなります。

高血圧を放置すると主に脳、心臓、腎臓がやられます。治療の目的は全年齢ともに脳卒中や心臓病を減らすことです。癌は関係ありません。

血圧が高くなっても通常は自覚症状がありません。だから指摘されても放っておく方が多いのです。さすがに200になると頭痛やボーッとすることが多いですが。

40~50歳代での治療目的は将来的に起こす可能性のある脳卒中、心筋梗塞などの心血管疾患を予防することです。自覚症状がないからといって40~50歳代で160~180mmhgを放置するとほぼ間違いなく腎臓がやられ血液透析まっしぐらとなります。もちろんそのうち脳出血や心筋梗塞も起こしますが。

1987年の厚生省の基準180/100mmHgが頭にある75歳以上の方は、血圧なんて下げる必要ない、血圧が高い方が調子良いといわれる方もいます。ただし脳出血の最大の原因は高血圧です。しなやかな血管の若者が血圧200になっても大丈夫ですが、高齢者の脳血管は元々痛んでます。そこに200の血圧が加われば簡単に脳出血が起こるのです。

それと心不全です。高齢者の心臓は固くなっており(拡張能が障害されている)、ある程度の弁膜症も持っているのでそこに200の血圧が加われば一気に急性心不全を起こすのです。

これらが放置してはいけない理由です。

高血圧症には本態性高血圧症(ほとんどのタイプ)と二次性高血圧症があります。

本態性高血圧症(全体の9割)は遺伝的要因と生活習慣で決まります。二次性高血圧症(残りの1割)は腎臓、腎血性、副腎腫瘍、薬剤などが原因でいくら生活習慣をよくしても治りません。当然加齢により本態性高血圧症を伴うことがあります。

高血圧の治療は生活習慣改善と下がりが悪ければ薬です。悪い生活習慣とはタバコ・コンビニ弁当・夜更かし・まったく運動しない・過度なストレスなどです。

よく減塩と運動が重要といわれますが、先ほど述べたように、心拍出量(血管内の血液の量)と末梢血管抵抗(血管の硬さ)の掛け算で血圧は決まります。

塩分が多いと血管が周りから水分を引いてきて血管がパンパンになります。1日6gの食塩が推奨ですが美味しいラーメンの汁を全部飲むと6g以上です。

加齢により血管がカチカチになるのはある程度仕方のないことですが、ジョギング・水泳など多少息が上がる程度の有酸素運動を行い血管内皮細胞の機能を保持することでカチカチも進行が遅くなります。
筋トレも重要で高齢者の転倒防止には下肢筋力をつけることは非常に重要です。膝が悪い方も椅子に座った状態で下肢を上げて15秒保持する、などの運動で大腿四頭筋を鍛えることはできます。ただし血圧が高いままでウエイトトレーニングは避けてくださいね。パンパン減らすのは減塩、カチカチ減らすのは運動、よく覚えていてください。

薬は色々あります。詳細は省きます。薬を内服すると確かに血圧は下がります。ただし薬だけのんで生活習慣をおろそかにしていると将来的に別の病気にかかりますから、あくまでも悪い生活習慣を改善ししっかり運動してください。

こんな感じで説明しています。6月から生活習慣病療養計画書を説明していて感じるのは、高血圧の危険性、意義に関して皆さんご興味がおありのようです。1回の説明では理解はできても覚えていません。わからなければ何度でも説明しますのでご安心ください。