遅延型フードアレルギー

何となくしんどい、湿疹が治らない、お腹の調子が悪い、皆さんどうされますか?

しんどい時は内科に行きます。採血されて、何も問題ありませんでしたよ。はい終わり。

湿疹が治らない、体がかゆい。皮膚科に行くと塗り薬を処方されます。これ塗っておいてくださいね。なかなか治らないんですけど・・・。また出しておきますね。

お腹の調子が悪い時は消化器内科に行きます。早速内視鏡をしましょう。何もないですよ、安心してください。でも治らないんですけど・・・。では整腸剤でもしばらく飲んでみてください。

多分こんな感じの場合が多いのではないでしょうか。

今回はちょっと違った側面から見てみましょう。

しんどい、湿疹、下痢・・・などなど。違った症状に見えますが、体に有害物質が溜まっていたり、普段口にするものが悪いときは多彩な症状が出ることがあります。有害重金属や遅延型フードアレルギーが原因であることもあるのです。

有害重金属は別の機会にお話しするとして、今回は遅延型フードアレルギーのお話しです。

例えば筋肉をつけるために卵をたくさん食べます。でも体に栄養となるためには小さく分解されたアミノ酸がうまく栄養になることが重要です。1万円札をもって自動販売機の前に居ても何も買えません、小銭に両替することから始めます。

さて食べたものが腸に吸収され栄養となるためには、まず小腸(主に回腸)から吸収されます。本来大きな分子量の食べ物は小さく分解されアミノ酸になって小腸絨毛の隙間から粘膜下の毛細血管に行くことで全身を回ります。ただし十分分解されないものは小腸粘膜で引っ掛かります。細かな腸のフィルターを通過できないのです。

小腸粘膜には免疫細胞がたくさん見張っています。するとそこに引っかかった分解されてない卵のタンパク質のかけら(例えばの話です)に免疫細胞が寄ってきて抗原抗体反応が起こります。そこで炎症が起きるのです。体はこれらを敵とみなして攻撃します。その結果小腸粘膜の細かいところにある接着帯(タイトジャンクション)を破壊してますます炎症が進み、その結果として腸の調子が悪くなるのです。

聞かれたことはあると思いますが、グルテン、カゼインなどがよく腸の細かなフィルターを詰めてしまうのです。

皮膚科や内科、アレルギー科でアレルギーの検査をする際には保険適応のある即時型アレルギー検査をされます。アレルギーにはある抗原が入ってきてすぐに反応する即時型アレルギーと、24時間程度してから反応が起きる遅延型アレルギーがあります。即時型アレルギーは入ってきた食べ物と肥満細胞が結合しヒスタミンが放出され反応が起きます。IgEという抗体が関与します。カニをたべたら唇がパンパンになってきた、などがそうです。

遅延型アレルギーとは元々ある食物に過敏な人がその食べ物を食べた時に半日から1日してから調子が悪くなるパターンです。かゆみとして出る場合もあるし、お腹がはる、下痢の場合もあります。何となく息苦しい、あるいは体がだるい、の全身症状のでる場合があります。IgGという抗体が関与します。本来起こらなくてもよい抗原抗体反応が起こり繊細な細胞の隙間を潰し、白血球が集まり炎症を引き起こします。また本来腸の粘膜の上にいる酵母、真菌がつぶれてしまった細胞間から粘膜の下にはいってそこで増えてしまいます。

遅延型フードアレルギーは気づかない間に食べ物でアレルギー反応が起き細胞が慢性炎症を起こしている状態です。だから全身に症状が出るのです。うつ状態や小児の自閉症にも関連するといわれています。

プロテニスのジョコビッチ選手が試合中、集中力と体力がもたなくなった時期があります。原因が小麦に含まれるグルテンであったことがわかり、グルテン完全除去食により体調が復活したことは有名な話です。

保険の効く即時型アレルギーで反応が出なくても遅延型フードアレルギーで高い反応が出れば、その食物が悪いと判断します。でも何故か日本のアレルギー学会は遅延型フードアレルギーを参考にしないようにしています。

遅延型フードアレルギー検査の方法は採血をして米国に送ります。結果がでるのに2~3週間かかります。様々な検査キットがありますが大体100〜200項目ほど調べます。案外陽性となっている食べ物が多いことに皆さん驚ろかれます。

よく見ると卵黄、卵白、小麦、乳製品に強陽性に出ていることが多いです。

ありとあらゆる食べ物に反応が出ていても卵、乳製品、小麦粉、サトウキビのトリガーとなる食物を一旦中止することで収まる場合が多いのです。

アレルギー反応の強さにより毎日食べているものを週2回に減らす、反応が強いものは1か月やめてみる、強陽性のものは3~6カ月やめることができれば脾臓がその食べ物に対するIgG抗体を完全に処理してくれて、その後再度調べてみても反応が軽くなっていることが多いのです。
何よりも今まで感じていた全身症状が改善することが一番の証拠となります。

なぜアレルギー反応がでるのかは個人差がありはっきりしませが、同じものを食べ過ぎると体が過剰に反応することは間違いなさそうです。小麦に過敏だったので一旦完全にやめて、その間今度は同じ野菜ばかり食べ続けると、その野菜にアレルギー反応が出てきた例もあります。健康に良さそうなので乳製品ばかり食べるのもお勧めできません。

何となくしんどい、湿疹が治らない、常にお腹の調子が悪い時は、遅延型フードアレルギーの可能性も考え、よくご存じの先生に相談してみてはいかがでしょうか。