老化について

何歳から老化は始まりますか?
10代の若者は20代になったら若くない、と思ってますし、40歳になればおじさんと呼ばれます。本人は若いつもりなんですけど。
理想を捨てた時に初めて人は老いる、とか、学ぶことをやめたものはみな老人だ、とも言われます。

実際には細胞でみると生まれた時から老化は始まり、細胞だけをみると約50回分裂するとそこで止まり老化細胞となります。個体としては30代半ばから何となく疲れるな、年取ったかな、と老化が始まります。

細胞の中を少しのぞいてみましょう。

染色体の末端にテロメアというものがあり、細胞が分裂するたびに短くなりテロメアの残りがなくなると細胞はそれ以上分裂できなくなります。その後老化細胞だらけとなり一部で発癌などが起こります。テロメアGテールの長さを測定することによりテロメア年齢がわかります。

遺伝子は受け継がれたものが基本ですが、ゲノム修飾により加齢に伴う癌や変性疾患などが起こることがあります。
エピジェネティックな変化に影響を与える因子として、化学物質、喫煙、ウイルス感染、慢性炎症などがあります。

また加齢そのものでも遺伝子は不安定化し突然変異を起こし病気の原因となります。

人体が損傷を受けた時に幹細胞が活躍しますが、幹細胞もやがて枯渇します。間葉系幹細胞が枯渇すると骨粗鬆症、上皮系幹細胞は腸管機能の低下、造血幹細胞は骨髄異形成、といった具合に病気を発症することになります。

加齢に伴うNAD産生低下や、酸化ストレスによりミトコンドリア機能は低下します。それによりエネルギー産生の低下や長寿に関するサーチュイン遺伝子の活性化がうまくいかなくなります。

加齢により細胞内のタンパク質の恒常性の維持ができなくなり安定性を失いオートファジー(不要なたんぱく質を除去する)が低下し、老化した不要な細胞成分が増加します。

本来不要になった細胞はアポトーシスといって、その細胞を自身で死滅させるプログラムが働きマクロファージなど自分の免疫系の細胞が処理してくれます。そうしないと不要な細胞だらけになります。しかし老化細胞が存在すると他の細胞にアポトーシスを抑制するようなシグナルをだし老化細胞が生き残ろうとします。

このように老化細胞が増えてくると正常細胞よりもエネルギーを消費し、細胞増殖を止めたり、他の細胞に炎症性サイトカインやその他さまざまな因子を分泌し、一緒に老化するよう働きかけます。このような細胞は一部が癌化・変性し病気を引き起こす元となります。

このように老化細胞はゾンビのように長く居座ります。老化しないためには、あるいは若返るためにはこのゾンビ細胞を殺すことが必要です。

当然老化細胞除去に対する取り組みも研究されています。老化細胞を殺すが正常細胞には影響を与えない物質としてダザニチブ(白血病の分子標的薬)+ケルセチン(様々な食品に含まれる主要なポリフェノール)が有用とされました。この二つの組み合わせで様々な種類の老化細胞を殺すことができる可能性があります。

また老化細胞には老化抗原GPNMBが特異的に認められます。それを標的としたワクチンを作成し肥満モデルや動脈硬化モデルのマウスに投与することで、糖代謝異常の改善やフレイル改善が認められたとの報告もあります。

簡単に人に対して使用できる抗老化薬ができるのはまだまだ先になりそうです。今すぐ摂取できる老化細胞除去効果のあるものとしては、ケルセチン、クルクミンといったところでしょうか。
今後の研究の成果が楽しみです。

大通公園は綺麗に色づいています