寿命の話

寿命の話です。日本人の平均寿命は2021年に、女性87.74歳、男性81.64歳と過去最高を更新しました。
いつからこんなに長寿になったのでしょうか。

鎌倉時代の平均寿命は24歳だった、との記載がありました。そして江戸時代になると約40歳まで生きられるようになりました。食料を得たのです。それまでは栄養失調で死亡していました。
そして平均寿命が50歳をこえたのは1947年でした。1940年代にペニシリンが発見され感染症の治療が行われるようになったことと関係があるようです。

では人の寿命は何歳まで延びるのでしょうか?すでに人生100年時代といわれますが今の40代は平均寿命が100歳まで到達するのでは、というデータもあります。今から60年先のことです。

他の哺乳類ではネズミは3年ですが、ゾウは60年、ホッキョククジラは150~200年生きるようです。体が大きくなれば寿命は延びる、長く生きる生物の子供は少ない、うまくできています。

以前から寿命を延ばす薬剤の研究が行われていますが、候補として、メトホルミン、アスピリン、ラパマイシンがあります。ただし健常者へのアスピリン投与はどうやらメリットがないという結果に終わっています。

さてヒトの最長寿命を延ばすことができるかどうかは別として、老化を遅延させることにより健康寿命はぜひとも伸ばしたいものです。

アフリカ大陸東部には地下に暮らすハダカネズミがいます。これが驚異的なネズミで、遺伝子は普通のネズミと同様ですが、通常のネズミの10倍の寿命があります。癌に対する耐性、低酸素に対する耐性があり、死ぬ直前まで元気な理想的なネズミだそうです。

加齢により癌、心臓病、認知症、骨折などさまざまな病気が発生してきます。老化研究では個々の疾患に対してではなく老化を遅らせることが病気の発生を抑制する、と考え研究されています。

ずいぶん前の報告ですが、若いラットの骨髄を老ラットに移植することで、全身の血管の機能を若返らせることができるようです。また2015年の報告ですが、老齢マウスと若年マウスを並体結合すると、老齢マウスの組織、器官の若返りと若年マウスの組織、器官の老化促進が起こります。どうやら血液中に老化を制御する液性因子がありそうです。最近の研究では、マウスに老化細胞を除去する物質を繰り返し投与することで臓器の機能低下が抑えられ筋力が増強した、との報告があります。

今後の老化研究の進歩にぜひ期待したいものです。