脂肪細胞の不思議

脂肪細胞というと、肥満・糖尿病など悪いイメージが多いようです。実際、高カロリー摂取や運動不足などによって脂肪細胞は次第に肥大化していきます。

脂肪細胞が肥大化すると、血管を収縮させる物質により血圧を上げる方向に働きます。またインスリン抵抗性を惹起する種々の物質が出ることで糖尿病の顕在化、さらに高インスリン血症となり肥満を助長します。肥満中枢を刺激して食欲を抑制するレプチンの分泌低下や血液凝固を促進する物質などが出てきます。肥大化した脂肪細胞は悪いのです。

でも実は脂肪細胞は健康、長寿、美容にとても重要です。脂肪が少なくなると顔面のように見た目が老化してくるだけではなく、内臓の老化が進行してきます。

角砂糖1個の大きさに脂肪細胞は約100万個あります。血管で栄養されているのですが非常に脆弱で低酸素ですぐに弱ってしまいます。そうすると脂肪細胞の周りの前駆細胞や幹細胞がたたき起こされれ、様々な因子が分泌され修復しようとします。血管新生、組織再生が起こってくるのです。

例えば癌の手術をしてその後放射線を照射したとすると、その部分の脂肪由来の幹細胞も死滅してしまうのです。そうなるとなかなか修復機転が起こりません。癌細胞を攻撃する目的で照射した放射線により、その部分の組織はやせた土壌になり草も生えてこない、すなわち傷の治りが悪くなるのです。土壌に栄養を与えない限り回復しません。

その部分に脂肪細胞を移植すると治らなかった傷が治ってきます。脂肪細胞の中の幹細胞には組織修復、血管新生を促す良質な幹細胞が眠っているのです。

脂肪細胞は腹部から比較的安全に採取することができます。脂肪吸引して採取した脂肪細胞から幹細胞を取り出して培養すると、当日は皮膚や脂肪が傷つけられたので、bFGF, PDGF, EGFなどのサイトカインが出てきます。これらが幹細胞をたたき起こしその後KGF, IL-6, MMPがでて、1週間程度でお待ちかねのHGF, VEGFが出てきます。HGF, VEGFは血管新生や組織修復に働きます。その他エクソソームも出てきますが、良いものだけではなく、脂肪細胞が培養される際の排泄物としてアンモニアなどの有害物質も出てきます。

これら幹細胞を培養した際にでてくる分泌物を集めたものが幹細胞培養上清液、それを投与するのが幹細胞培養上清療法です。良質な培養上清液とは有害物質が入っていない、動物由来の成分が入っていない、長期の安定性がある、ロット間で成分に違いがない、などです。

幹細胞の投与と、その培養上清液を投与するのでは違いがあります。いずれの場合も様々なサイトカイン同志が協調しあって組織修復の方向にもっていくのは同じです。ですが幹細胞投与は法律上の規制がありややハードルが高いです。一方培養上清投与はあらかじめ準備できている上清液を投与するだけなので簡便です。中に幹細胞が入っていないので、繰り返し投与する必要があります。

脂肪由来幹細胞培養上清療法は、組織再生・血管新生を促すことで、美容、育毛、難治性潰瘍などに用いられます。また抗炎症作用として副作用のないステロイドのような用い方があります。さらに組織修復、抗線維化として肝硬変や間質性肺炎などにも実験的に用いられています。

動物に対しては人への使用と比べ何も規制がないので畜産関係、競走馬、ペットに対する使用は実は数多く報告されています。

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