新型コロナウイルスに対する再生医療(幹細胞治療、幹細胞培養上清療法)
新型コロナウイルスに対する再生医療のお話しです。
ウイルス感染により体の防御反応として発熱します。発熱により白血球の機能が促進され外敵と戦う準備をします。高い熱によりウイルス増殖は弱まります。それでもウイルス増殖が勝ってしまうとウイルスは肺で増え続け、免疫細胞を巻き込みながら肺炎という形になります。さらに免疫細胞がウイルスに対抗しようとして炎症性サイトカインと呼ばれる細胞間伝達物質の異常上昇がみられ(サイトカインストーム)、ウイルスを全滅させようとする結果、自分の体も滅びてしまうことがあります。
現状ではコロナウイルスに確実に有効な抗ウイルス薬はありません。
新型コロナウイルスと再生医療(幹細胞治療、幹細胞培養上清療法)について調べると、FDAに登録されているクリニカルトライアルは、7月19日時点で約40件ヒットします。そのうち殆どが幹細胞を用いたものであり、3件が幹細胞培養上清に含まれるエクソソームを用いたものです。ケースレポートとしては65歳、重症肺炎患者が幹細胞投与により軽快した例、重症1名を含む7名の患者が幹細胞投与により軽快した例があります。
ここでいう再生医療とは幹細胞治療および幹細胞培養上清療法のことを示します。
幹細胞治療とは脂肪、歯髄、骨髄由来のヒト間葉系幹細胞を培養し、十分増殖した幹細胞を患者さんに投与するものです。一方幹細胞培養上清療法とはヒト間葉系幹細胞を培養した際の上清液を投与する方法です。培養上清液には各種成長因子、サイトカイン、エクソソームが含まれ炎症に対する免疫調整作用があり、一時的ではありますが幹細胞治療と同等の効果があるとされています。
ウイルス感染に対する再生医療とは、ウイルスそのものを退治するのではなく、ウイルスに攻撃された組織の修復、ウイルスに対する抗体産生の増強、そして感染が少しでも成立しないような状況を作ることが目的です。
組織修復は幹細胞および培養上清の得意とするところで、様々なサイトカイン、エクソソームを介して組織修復、炎症抑制、血管新生に働き、ウイルスにより破壊された組織をもとに戻そうとします。
幹細胞が年をとって衰えた免疫機能を回復させるという論文があります。年をとって免疫力が低下し、抗体をほとんど作ることができなくなったマウスに幹細胞を投与すると若いマウスと同様の量の血漿IgGや腸管分泌型IgAを産生するようになります。
また幹細胞分泌因子には、ウイルスが細胞膜に侵入するときに必要なタンパク質の発現を抑えることも示されておりウイルス感染成立の機会を抑制します。
ウイルス感染を起こしウイルスにより諸臓器が破壊され、体が過剰に反応している時には上記のような再生医療(幹細胞治療、幹細胞培養上清療法)が役に立ちます。
なかでも幹細胞培養上清療法は予め上清液をストックして必要な時にいつでも使用できるので、幹細胞を培養することから始めるよりずっと有利です。
当院では以前より脂肪由来、歯髄由来の幹細胞培養上清療法を行っております。主にエイジングケアとして行っておりますが、その他様々な疾患に有用です。
2016 LA