心不全と肺炎

心不全とは心臓が悪いために、息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気です。
一方肺炎は、主に細菌やウイルスに感染することにより、肺の中を通る気管支のさらに先にある肺胞という部位が炎症を起こす病気です。

心不全と肺炎は全く異なる臓器の病気ですが、鑑別が難しかったり、両者が同時に起こることもあるのです。

心不全では心機能が弱った結果、多くは肺に水がたまり息苦しくなり咳が出ます。動くと息苦しく、安静にしていても肩で息をしている感じです。この状態を肺うっ血といいます。肺炎では肺の炎症が広がることで健常肺が少なくなり少し動くと息苦しくなり、咳・痰を伴います。熱が出ることが多いのですが高齢者では熱がないこともあります。

循環器や内科の専門医であれば心不全と肺炎の区別は普通はつくのですが・・・。

高齢の女性が数日前から動くと息苦しい、咳が出る、とクリニックに来院されました。熱はありません。
大抵は心不全か肺炎です。病状をお聞きし、診察したのち、まずは胸部X線(レントゲン)検査をします。X線上心臓は大きく、両側肺に影がありました。(レントゲンだけでは心不全と肺炎の区別がつかないこともあるのです)
これは心不全だろうと思い、血液検査をすると炎症の数値が高くなっています。肺炎の場合にはそうなることが多いのです。
あれ、肺炎かな?
心不全を診るには心臓超音波検査が有用です。心不全の場合、大抵は心臓の収縮力が低下しています。でもこの女性、心臓の動きは悪くないのです。(心臓の動きが悪くない拡張不全型の心不全もあるのです。その場合は血液検査のBNPという数値で判断します)

いずれにしても入院が必要なので病院に紹介状を書くことにしました。
心不全か肺炎かわかりませんけど入院お願いします、なんて書くと格好悪いので・・・。
本当はわかっているのですけどね。

慢性心不全の患者さんが呼吸器感染(気管支炎、肺炎)にかかると、低酸素による頻脈や発熱により心臓の仕事量が増大します。そのため元々弱っていた心臓がさらに増悪し、レントゲン上、肺炎像に加えて心不全の像も出るのです。また肺炎に伴う炎症性のサイトカインが心機能を抑制する方向に働くので、さらに心臓を悪くするのです。

ということで心不全も肺炎も正解でした。
このように高齢者は、それまで心臓が悪いなんて言われたことなかったとしても、慢性心不全がベースに存在し、呼吸器感染を契機に簡単に心不全が増悪することがあります。
症状が出てなくても自分の心臓の状態を把握しておくことは大事なのです。

まずはかかりつけの先生にご相談ください。