幹細胞について(2)
歯髄幹細胞を用いた再生医療のお話しです。
歯髄とは歯の神経のことです。歯髄にある幹細胞を培養しそれを治療に用いる、というお話です。
虫歯がひどくなり歯髄の保存ができない時に抜髄(歯の神経を抜く)をします。歯髄がなくなった歯はもろくなり歯の寿命は短くなります。歯の防御反応がなくなるので根尖(歯茎に埋まった歯の先端)性歯周炎を起こしてきます。根尖部周囲の膿瘍形成と心血管イベントは関係が深いといわれています。
歯髄幹細胞を培養して抜髄した歯に注入すると、本来の歯髄のように血管、神経再生を伴い、一部は根幹側壁に作用して象牙質となります。抜髄した歯髄が再生できる、ということです。動物実験では十分効果があり一部ヒトの治療が始まっています。
では実際どのように歯髄幹細胞を採取するかというとそれは親知らずなどの抜歯をした自分の歯からです。ただし高齢者の歯髄からの幹細胞の採取効率は若年者と比べ低く、さらに血管、神経再生度合も低くなります。
最も効率よく歯髄が採取できるのは乳歯からです。乳歯は20本あり、家で抜けた乳歯を上に投げたり、地面にたたきつけては実はもったいないのです。
年間全国の歯科で20万本の乳歯を抜歯しているようです。これらから歯髄幹細胞を採取すればどれだけ培養できるでしょうか。残念ながら現時点では幹細胞を取り出して培養できる施設は限られてます。ネットワークづくりが今後の課題です。
それから歯髄幹細胞だけでなく、培養した上清液にも立派な作用があります。幹細胞が産生した成長因子、免疫調整因子、抗炎症因子、神経再生因子等々が含まれており、体内の幹細胞を活性化することにより効果が発現すると考えられています。
もちろん歯髄の再生だけではありませんよ。全身にいきわたります。
今後が楽しみですね。ワクワクしてきます。