女性の薄毛と甲状腺
甲状腺は首の前にある大切なホルモン臓器です。普段は何気なく機能していますが、機能が低下してくると実に様々な症状を引き起こします。
・虚弱、冷え、疲労感
・薄毛、肌や爪の薄さ
・体重、体脂肪増加
・活力、やる気の減少
甲状腺からはサイロキシン(Thyroxine:T4)とトリヨードサイロニン(Triiodo thyronine:T3)の2種類のホルモンが作られます。T4からT3が作られ、蛋白と結合していない遊離T3こそがホルモンとしての働きがあるのです。
教科書的には甲状腺機能低下症の原因として、橋本病、甲状腺術後、先天性など書かれていますが実際患者さんをみるとそれほど簡単なものではありません。ここでは甲状腺術後や先天性、重症の橋本病はさておき、甲状腺ホルモン欠乏の3つの原因をあげます。
1 )加齢により甲状腺機能が低下しそれに伴い甲状腺ホルモンの量が低下する
2) T4からT3への転換機能が低下する
3) 受容体の機能的低下により甲状腺ホルモン値が正常であってもホルモン欠乏症状がでる
1)の甲状腺機能低下症ではTSHという値が上昇するので病院での一般的な検査で分かります。2)はT4からT3への変換低下ですので不活性化型のreverseT3を測定しないとわかりません(保険適応外です)。このT4からT3への変換低下はストレス、絶食、加齢により低下するとされています。そして3)では血中値がすべて正常ですので甲状腺ホルモン補充によってのみ症状が改善します。
※lowT3症候群といって心不全、肝硬変、慢性消耗性疾患の場合、体がエネルギー消費を抑えるためT4からT3への変換をわざと低下させることがあります。この場合体力が回復すればもとに戻ります。
疲れやすい、薄毛、冷えがひどい、と受診しても一般的に測定されるTSH、T4、T3が正常範囲内なのでこのままでよいですよ、ではないのです。
さて甲状腺ホルモンを補充する際には一般的にはチラージンSというT4製剤が薬として使われます。以前はチラージン末といって豚甲状腺から抽出したT4とT3の混ぜ合わせたものが用いられてました。
甲状腺ホルモンで大切なのはあくまでもT3です。T3の値を最適値にすることにより症状は改善するのです。これまでの説明でT4単独補充のみでT3を上昇させることは困難であることはお判りいただけると思います。T4とT3を一緒にバランスよく補充することが重要なのです。
甲状腺ホルモン補充で大切なことは、T3最適値はありますが、あくまでも患者さんの症状改善をみるようにします。もちろん投与しすぎると多汗、動悸、ふるえ、神経過敏などの副作用がありますので医師に十分相談しながらの補充となります。
女性の薄毛だけでなく、疲れやすい、やる気・活力がない、といった症状がある場合は甲状腺ホルモン不足も頭の片隅において、医師に相談してみてください。
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