マイヤーズ・カクテル

マイヤーズ・カクテル。色彩溢れる艶やかな響きです。でも飲むカクテルではなく点滴のお話しです。

メリーランド州の開業医マイヤーズ医師は30年以上にわたり、喘息、慢性疲労、うつ病などを独自の点滴で治療することで有名でした。1984年にマイヤーズ医師が亡くなりクリニックは閉院、多くの患者さんが行き場を失いました。その患者の一人がペンシルベニア州のアラン・ゲイビー医師を訪れ、点滴は引き継がれました。

マイヤーズ・カクテルとは人間に必要な栄養素であるビタミン・ミネラルを点滴投与する治療法です。主にビタミンB、C、マグネシウムの血中濃度を急速に上昇させることで様々な作用を発揮します。それぞれの分量・投与量が絶妙な配分で決まっており、決して適当な量を入れるわけではありません。

ビタミンBは、B1,2,3,5,6,12それぞれがエネルギー代謝で重要なTCAサイクルの各所で必要です。ビタミンCを点滴することで抗酸化作用、抗アレルギー作用が発揮されます。マグネシウムの血中濃度を上げることで、気管支喘息の治療や冠攣縮性狭心症の治療にもなります。

マイヤーズ・カクテルの適応として、気管支喘息、片頭痛、全身倦怠、こむら返り、アレルギー性鼻炎、慢性蕁麻疹、耳鳴り、めまい、など多くの疾患あるいは不定愁訴にも有効です。

気管支喘息は以前は夜間救急外来で診る最も一般的な疾患でした。長時間作用型のステロイド吸入が広く使用されるようになってからは夜間の発作の頻度は減りました。それでも夜間に発作のある場合はネオフィリン、ステロイドの点滴がお決まりのパターンです。一時的に効果はあるのですが、交感神経が興奮しその後目が冴えて、眠れなくなることがよくあります。
このような場合にマイヤーズ・カクテルを使用すると発作はおさまり夜もぐっすり眠れることがあるのです。もちろん通常の吸入を定期的にしたうえでの話ですが。
マグネシウムの気管支拡張作用に加えて、カルシウム、ビタミンC、B3、B5、B12も喘息発作に有効であることが文献上報告されています。

通常の内服治療でおさまらない片頭痛に対してもマイヤーズ・カクテルは有効である場合があります。マグネシウムの血中濃度上昇で効果が得られます。

慢性疲労に悩む患者さんを調べたところ約半数にマグネシウムの欠乏がありました。慢性疲労症候群でマグネシウムの経口投与は有効ですが、筋注・静注での効果が高く、さらにマグネシウムの単独投与よりもビタミンBを組み合わせた方が効果は高いです。

線維筋痛症は原因不明の筋肉痛を訴える病気ですがマイヤーズ・カクテルを続けることで活動レベルが増加し疼痛レベルが減少したとの報告があります。完全に症状が消失した患者はいませんでしたが、副作用はありませんでした。

マイヤーズカクテルは水様性ビタミン、マグネシウム、カルシウムを規定通りに混入します。あとはその日の患者さんの訴えに応じて肝庇護剤、疼痛治療剤などを混ぜ合わせカクテルします。

このカクテルで患者さんの症状が少しでも緩和されが心地よくなっていただければ幸いです。なお健康保険は効きません。