これって本当にカゼ?
これって本当にカゼ?というケースをいくつかご紹介します。
30代女性。2日前から喉の痛み、その後鼻水、咳、微熱が出現し来院。食欲はないが全身状態は悪くない、咽頭発赤あり、肺の音は正常。
このようなケースはカゼと診断します。何もしなくても勝手に治りますが、必要に応じて喉、咳、鼻水の薬を処方。抗菌薬は不要です。
30代女性。1週間前から咽頭痛、咳。カゼと診断し症状に合わせて内服処方。数日で一旦軽快しましたが昨日より38度台の発熱に加えて咳、痰が出現。全身状態は悪くなく、聴診上肺雑音なし。念のため採血したところCRP15.8 WBC15500と上昇。胸部X線では右下肺野に小さな浸潤影を認め、気管支肺炎と診断し抗菌薬の点滴を行った。(CRPは炎症、主に細菌感染で上昇します。正常0.1、純粋なカゼでは1まで上がるかどうか、扁桃炎では5程度の上昇。肺炎や急性虫垂炎で10~20まで上昇、ここまで上がると入院を考えるレベルです。WBCは白血球で正常は5000~8000ですが1万をこすと通常細菌感染を疑います。)
肺炎になると抗菌薬が必要になってきます。健常な若年女性でカゼが治りきらないときには肺炎に進展することもたまにはあります。
60代男性。5年前に大動脈弁置換術(機械弁)を行っている。1か月前に一旦高熱がでたがその後微熱が持続。喉の痛み、咳ははっきりしない。2か所の医療機関で抗菌薬を含め風邪薬を処方されたが治らないため当院受診。
他院で一度は診てもらったが軽快しない場合は、勝手に治らない病気なのかもしれません。
過去に心臓の弁の手術をされた方で、熱が持続する場合は適当に抗菌薬をいくのではなく感染性心内膜炎を常に考え血液培養で血液中に細菌がないかどうかを確認する必要があります。中途半端に抗菌薬を投与されていると本来検出される細菌が血液中から検出されない可能性があります。
このケースの場合、血液培養を施行。抗菌薬が投与されていましたが、血液中から緑色連鎖球菌を認めました。病院紹介で詳細に機械弁を見ていただき感染性心内膜炎に準じた治療を行ってもらいました。
40代男性。38度台の発熱で来院。咳、喉の症状はありません。嘔吐、下痢もありません。よく聞いてみると2日前に焼き鳥を食べた、とのことでした。カンピロバクターの食中毒は最初に熱がでてから腹部症状が出ることが多いです。その旨説明し明日以腹部症状がでたらまた来てください、と言って解熱剤のみ処方しました。すると案の定翌日腹痛、嘔吐で来られました。採血ではCRP9.4 WBC10800と上昇していました。抗菌薬、症状に合わせたお腹の薬を処方しました。便の培養検査はしませんでしたが食中毒系、おそらくカンピロバクターであったと思います。
30代女性。2日前より38度台の発熱、悪寒戦慄もあったようです。喉の痛み、咳はありません。他院でカゼと診断され投薬されましたが治らないため来院。以前似たような症状があり急性腎盂腎炎と診断されたことがありました。排尿時の痛みなど膀胱炎症状はありませんが採血してみるとCRP10.8 WBC13200と上昇しており、尿検査では膿尿の所見があり、CVA叩打痛もあり腎盂腎炎と診断し毎日朝夕の抗菌薬の点滴を行いました。
カゼの季節です。カゼは熱も出ますが鼻水、喉、咳の上気道症状を伴います。インフルエンザの場合も通常上気道症状を伴ってます。ほとんどのカゼは自然に治りますし、ゴホゴホ咳をして黄色い痰が出てもたいていはカゼです。市販薬を続けても熱が下がらない場合や、喉の痛み、咳がなく熱だけの場合は一度医療機関を受診し、しっかりと診断してもらいましょう。もちろんすぐに来ていただいても大丈夫ですよ。