脳卒中

急に倒れて痙攣した、手足が動かない。こんな症状でなくても、嘔吐した、めまいがする、だけでも脳卒中かもしれません。おじいさんに呼びかけても手足は小刻みに動かしているので、いびきかいて寝ているだけと思って放っておいたが朝になっても起きなかった、という実際の話もあります。

脳卒中という言葉を聞かれたことはあると思いますが、脳卒中には脳梗塞、脳出血、くも膜下出血があり、大体7:2:1の割合です。昔の人は脳卒中のことを「ちゅうぶ(本当はちゅうふう)」と今でも言いますね。

脳梗塞は脳内の動脈が詰まって、その先の脳実質がやられてしまう病気です。動脈が詰まる場合、動脈硬化で徐々に細くなった動脈が詰まる場合と、心臓の不整脈(心房細動)で心房に血栓ができてそれが剥がれて脳内の動脈を詰める場合があります。脳には手足を動かす命令を出す中枢、言葉を理解してしゃべる中枢、様々な司令塔がありどこがやられるかでその後の後遺症が決まります。

脳出血は高血圧で脳内の動脈が痛んでいて、そこに負担がかかり動脈が破裂し脳内に出血する病気です。脳梗塞同様に脳実質が破壊されるので後遺症が残ります。

くも膜下出血とは脳内にできた動脈瘤が破裂し脳のまわりに広く出血する病気です。ただしこの場合脳実質周囲に出血はするけれども脳そのものはやられてないことが多いので意外と後遺症なく回復する場合があります。

高血圧を放置して脳卒中を発症された方を今までたくさん診てますが、肥満、高血圧を放置するとこんな場合がありますよ、というお話をします。

50代男性、肥満体型。若いころから高血圧がありました。原発性アルドステロン症というあるホルモン異常の高血圧があり、その治療を30代で行いましたがその後も高血圧が持続。本態性高血圧症を併発し徐々に悪化していました。

以前より薬を処方し、危険性をいくら説明してもなかなか定期通院してくれず、頭痛がするといって、血圧200以上になると薬をとりに来られます。ところがある時に外出先で急にめまい・嘔吐があり救急搬送され脳出血の診断を受けました。幸い左手足に軽い麻痺を残す程度で仕事復帰され、その後は降圧剤を真面目にのんでくれるようになりました。

この方には体型からも推測できる重症の睡眠時無呼吸症候群がありました。CPAP治療をするのですが、顔にかぶさるマスクがどうしても嫌ですぐにやめてしまいました。

しばらく安定していたのですが今度は急激なめまいがあり病院で小脳梗塞と診断されました。小脳梗塞の後遺症として難治性のめまいが残っています。

現在血圧は安定しているのですが、長期間の高血圧の合併症としての腎機能障害が急速に進んできています。今度は腎不全の代替療法としての血液透析を考えなくてはいけません。

この症例では脳卒中の麻痺が比較的軽いから良かったものの、年齢にかかわらず、脳梗塞・脳出血の部位によっては一発寝たきりということも多いのです。特に右半身が麻痺してしまう脳卒中では同時に言語中枢がやられることが多く言葉が理解できず、話すこともできなくなります。

脳卒中は特殊なケースを除いて、加齢に伴い血管が痛んできて起こる病気です。我々の全身の血管は高血圧に対応した造りでは無い為、高血圧が持続すると脳内の動脈に動脈硬化巣が多発し、脆弱となり、一部は動脈瘤となります。そこにさらなる血圧上昇が加わると動脈硬化巣の破裂(=血管閉塞)や血管そのものの破裂が起こります。

単なる高血圧症でもこうなるのですが、肥満体型(あるいはそうでなくても)で重症の睡眠時無呼吸症候群があると夜間呼吸停止後の呼吸再開時に急激に血圧上昇が起こります。そうなるとさらに脳卒中の発症確率を高めます。

脳卒中は怖いです。職場の健診で高血圧を指摘されたら放置されずに一度は診てもらいましょう。特に肥満体型の人は睡眠時無呼吸症候群が隠れていることもあり危険です。働き盛りで脳卒中になれば家族が大変です。できれば避けたいものです。

※睡眠時無呼吸症候群が気になるけれども忙しくて通院できない方はコチラから。