ネフローゼ症候群
健康な若年者に全身のむくみが出てきたときはこの病気かもしれません。
ネフローゼ症候群は腎臓から蛋白が漏れ出し、低蛋白になり全身にむくみが生じる病気です。
先日18歳の青年が朝から急に足がむくんできた、と来院されました。元々太っているかどうかはわかりませんが、多少の左右差はあるものの両足はパンパン。足全体が固くなり下腹部も腫れています。顔は腫れてませんが両手は表在血管がわかりません。やはり全身腫れているのでしょう。
本人はいたって元気で、体重増えたかどうかもはっきりしません。でもこの腫れ方は少なくとも時間が経っており朝から腫れているわけではなさそうです。おそらく体重は10kg は増加していると思われます。
尿検査をすると、やはり尿蛋白3+と多量に蛋白が漏れています。(正常では尿蛋白はマイナスです)
典型的なネフローゼ症候群と考え病院に紹介しました。
ネフローゼ症候群は腎臓の糸球体の障害により蛋白透過性亢進とそれに基づく大量の尿蛋白濾出、それに伴う低蛋白血症を特徴とする症候群です。原因疾患がないものを一次性、薬剤・感染症・悪性腫瘍・自己免疫疾患などの基礎疾患のあるものを二次性と呼びます。さらに糸球体組織により詳細に分類されますがここでは述べません。
一応診断基準を書きますが
1. 尿蛋白3.5g/日以上が持続する 2. 低アルブミン血症:血清アルブミン3.0g/dl以下 3. 浮腫 4. LDLコレステロール高値 となっています。
アルブミンは健常人では4.0~4.5g/dl程度、寝たきりの高齢者でも2台になると明らかな低栄養と考えます。でもネフローゼ症候群の際には血清アルブミンが1.5mg/dlととんでもない低値になります。
それに加えてLDLコレステロールが300~400mg/dlとこれもとんでもない高値になります。くれぐれもスタチンだけ出されて帰されないようにしてくださいね。
一次性ネフローゼ症候群は、年間約2500人程度の新規発症、小児から高齢者まで見られます。よく知られた疾患ですが実際の患者数は少ないです。
初発の際は基本入院して治療します。腎生検をして組織分類をする場合が多いです。減塩してステロイドホルモンを開始し徐々に減らしていきます。
小児のネフローゼは再発が多いのですが、成人になるまでに腎機能障害は残さずほぼ寛解します。中年以降の発症では再発し、ステロイドホルモンに加えて免疫抑制剤を使用するケースが多くなります。この場合後に徐々に腎障害が進行することがあります。
足がむくんできた、と多くの方が来院されます。中年の男女で脛を押えて少し圧痕が残る程度で、朝になって改善すれば心配ないでしょう。高血圧でカルシウム拮抗剤を内服されている場合はそのためかもしれません。
若い女性で片足だけが腫れて痛みがある場合は深部静脈血栓症の可能性もあるので受診しましょう。特にピルを飲んでいる場合は要注意です。
高齢者で両足の腫れている場合は、両足の循環障害である場合が多いのですが、心不全かも知れないので一度は受診してください。甲状腺機能が極端に下がっていても足は腫れてきます。
健康な若年者が足が腫れてきた、体が浮腫んできた。これは明らかに病気です。早めの受診をお願いします。