胃酸を下げる薬

血をサラサラにする薬を内服されている方は、たいてい胃酸を下げる薬がセットでついてきます。タ〇プ〇ン、ネキ〇ウ〇、パリ〇ッ〇、などです。
プロトンポンプ阻害薬(PPI)と呼ばれ、本来消化性潰瘍、逆流性食道炎などに用いられます。これらはとても良い薬なのですが、長期で内服するときの問題点についてのお話です。

胃酸を下げる薬(PPI)の長期内服は、感染症・下痢・微量元素欠乏・骨折・認知症・血管疾患と関係があるとされています。

PPI長期使用により胃酸分泌が抑えられ、腸内細菌叢が乱れ、下痢を引き起こすクロストリジウム・ディフィシル感染症を起こしやすいと考えられています。
また市中肺炎のリスクを上昇させるとの報告もあります。

ある種のPPI長期投与により特に高齢女性において慢性の下痢が起こることがあります。コラーゲン層形 成大腸炎とよばれるものです。水様性下痢が続く場合はPPIの副作用も考えておかねばなりません。

PPI長期投与によりマグネシウム、カルシウム、鉄、ビタミンB12などの吸収低下を起こし微量元素やビタミンが欠乏します。

PPI長期投与により高齢者において骨粗鬆症による骨折リスクが上がるとの報告があります。これは酸抑制作用により骨からのミネラル損失が加速されることが原因と考えられています。

PPI長期投与により認知症のリスクが上がるとの報告があります。PPIが脳血管関門を通じた脳のアミロイドベータ沈着を増加させることが明らかになっていることから、このことがリスクを有意に高めた原因ではないかと考察されている。また微量元素・ビタミン欠乏を引き起こすことも一因と考えらています。

PPI長期投与は心筋梗塞、脳梗塞による再入院、心血管疾患による死亡リスクを増やすとの報告があります。(Ann Intern Med153, Int J Cardiol177など)
メカニズムは不明ですが、PPIの長期使用で腸内細菌叢、腸管免疫への影響、さらに血管内皮機能への影響などが考えられています。

そもそもPPIを使用する目的は消化性潰瘍や逆流性食道炎の治療です。心血管疾患で血をサラサラにする薬が必要な方が、胃粘膜障害により大出血を起こしたという場合にはPPIはぜひとも必要です。
ただしどんな薬にもあてはまることですが、リスクの高くない人に、何となく予防的に、漫然と長期で内服することは良くないということです。

今回ご説明したPPIに限らず、ご自分の処方の中身を確かめて、なぜこの薬が入っているかを主治医の先生に相談してみてください。