糖質制限してもいいですか?
糖質制限という言葉が一般的になってきました。糖質制限をすればダイエットできる、糖尿病が治る、癌にも有効、など。
ただし中には糖質制限をしてはいけない人もいるのです。
人間は糖質(炭水化物)、脂質、タンパク質からエネルギーを産生します。糖質が一番手っ取り早いエネルギー源で、糖質を摂ることで脳をはじめ体はすぐに満足することができます。
しかし実際は血糖値が上昇するのはせいぜい2時間程度、肝臓や筋肉に蓄えられているグリコーゲンも12間程度しか持ちません。それこえるとタンパク質(アミノ酸)から糖を作らなくては体がもたないのです。これを糖新生といい非常に重要なメカニズムです。(実際にはケトン体の利用もありますがシフトチェンジはすぐにはおこりません)
多量の深酒をした時、夜間何度も目が覚めて寝た気がしない経験は誰にでもあると思います。これはアルコールが糖新生を妨げるためで、ただでさえ夜中は血糖値が下がる傾向にあるのですがそれ以上に低血糖に陥っているのです。人間の体は低血糖を防ぐために自律神経を緊張させて血糖を上昇させるホルモンを必死で出しているのです。
今のところ糖質制限が有用と認められているのは以下のものです。
・糖尿病の食事指導の選択肢の一つとして
・インスリン抵抗性の肥満の人が減量する場合
・難治性てんかん
・癌患者の食事の一つとして
肥満の方でインスリンが過剰分泌しているとさらに脂肪組織を大きくするので、なるべくインスリンが出ないように糖質を制限することは合理的です。またインスリン抵抗性主体の糖尿病の患者さんも糖質制限してインスリンをなるべく出させないように膵臓を保護することは大切なことです。
多くの癌細胞は通常の細胞の10倍程度の糖を消費します。慢性的な過剰な糖質摂取は高インスリンやインスリン様成長因子により癌細胞の成長を促すとされています。またミトコンドリア機能障害のためケトン体を栄養として利用することができません。
癌細胞が好む糖質を制限して兵糧攻めにするには、そのがん細胞がインスリン様成長因子を多く発現しているかどうかを循環腫瘍細胞検査(CTC検査)により確かめる必要があります。癌だからといってすべて糖質制限すればよいわけではないのです。
一方糖質制限してはならない人は、エネルギー源として脂質、タンパク質をうまく使えない人たちです。(この人たちはエネルギー源として糖質しかないわけですから)
糖質は誰でも何時でも簡単にエネルギー源として利用できます。一方、脂肪は体の中の蓄積量は多いのですがエネルギー源にするのはややパイプが細いのです。タンパク質はアンモニア代謝や体の酸性化の問題、分解が悪いと腸内環境を汚すこともあり、エネルギー源にするのは少し面倒です。
病気としては、腎臓が悪い人、副腎疲労、膵炎、肝硬変の人は基本的には糖質制限をしてはなりません。
糖質制限はうまく行うと非常に効果があります。糖質制限をしてよいかどうかは、かかりつけの医師に相談してみてください。
大間崎上空