口の役割
口から肛門までの消化管は哺乳類だけではなく中枢神経が発達していない原始的な生物にもあり、最初に発達した重要な器官です。
この消化管は人間の体の中を貫いている1本の管で、チクワの穴のようなもので体の「外」なのです。
口からスタートし食道、胃、十二指腸、小腸、大腸、そして出口の肛門まで全長約9mの複雑な機能を持つチューブです。体の「外」とはいえ必要なものは確実に吸収し、不要なものは排除し、常に脳と連絡をとりあって働く精巧なチューブです。
口からは食べ物とともに有害物質、病原体が絶えず入ってくるのですが、それぞれの場所で刺激や感染を防ぐ仕組みを持っています。特に小腸は最大の免疫器官と呼ばれるほど免疫機能が発達しています。食べ物は消化吸収されながらこの管を約24時間かけて通り抜け最後は便となります。
スタート地点の口の役割ですが、生きていくために必要な食べ物を摂食(食事をとること)、咀嚼(食べ物を噛んで食べやすくすること)、嚥下(飲み込むこと)といった最低限の機能があります。噛む動作が脳への刺激となります。また鼻とあわせて呼吸を行います。人間のコミュニケーションツールとしての発語、発声を行います。
異物の認識(感覚が鋭くわずかな量の砂なども認識できます)、味覚(おいしさ、傷んだ食べ物の認識)、唾液分泌(アミラーゼを分泌し消化へ関与します)といった機能もあります。
口の中には約300種類、数にして1000億個以上の細菌が生息しています。口腔内フローラと呼ばれます。善玉菌、悪玉菌がバランスを保ちながら存在しており、唾液での洗浄、歯磨きで細菌数は抑えられ病原性は低くなっています。ところが歯磨きが不十分で免疫力が低下し細菌の共生関係が崩れ悪玉菌が優位になると口臭、虫歯、歯周病の原因となります。共生関係の崩れた口腔内細菌は唾液とともに当然食道から胃に入り込んできます。重症の歯周病では口腔内にとどまらず気管に入った悪玉菌が肺炎を引き起こし、また血中に入りこんで心疾患をはじめ様々な病気を引き起こすことが知られています。
まずは毎日の歯磨きと、かかりつけ歯科での定期的な歯石の除去から始めましょう。