脚がむずむず

むずむず脚症候群って聞いたことありますか?英語ではRLS(Restless Legs Syndrome、下肢静止不能症候群)と呼ばれます。
夜から夜中にかけて足がむずむずしてきて気持ち悪い病気です。

脚の内側から火照る、虫が這うような感じ、チリチリする、と表現されます。脚を叩いたり、何度も寝返りして不快感を鎮めようとします。ひどい場合は何度も夜中に歩き回る、仕方ないのでトイレに行く、といった状態になります。

この病気はどの年代でもみられますが、加齢に伴って増加し、60~70歳代でピークになります。 男女比は約1:1.5で女性にやや多い傾向があります。 小児期から青年期までの間に発症する場合が2割程度あります。

特徴としては、足の異常感覚が起こり脚を動かしたくなります。安静にしていると悪化し、脚を動かすと改善します。日中よりも夕方から夜間にかけて出現します。

その結果、眠りにつけない、何度も目が覚める、熟睡できない、となり翌日眠くてしんどい状態が続きます。なぜか明け方になると治まってきて短時間は眠ることができます。

睡眠中の詳しい検査をすると、この病気の約90%に睡眠時周期性四肢運動(PLMS)というものを伴います。

正確な原因ははっきりしないのですが、脳内神経伝達物質であるドパミンの機能低下が主体です。ドパミン機能低下により、正しい情報を脳に伝えることができず、体の感覚に異常を感じるとされています。遺伝的・体質的にドパミン作動性の経路の障害が起こりやすい場合があり、遺伝する場合があります。

鉄欠乏の状態ではドパミン産生がうまくいかず、むずむず脚症候群が引き起こされることがあります。
鉄欠乏状態・鉄利用障害は成長期の子供、妊娠後期・出産後の女性、慢性腎不全(特に透析患者)に多く見られます。実際にむずむず脚症候群は妊娠後期で約15%、透析患者では20~40%にみられます。
また鉄欠乏とは関係なく、糖尿病、リウマチ、パーキンソン病などに合併する場合もあります。

なおドパミン遮断薬(鎮静剤、制吐剤など)や抗うつ剤、Ca拮抗剤、高脂血症治療薬などで起こってくる場合があり注意が必要です。

むずむず脚症候群の治療としては、眠前のカフェインやアルコールの摂りすぎを是正することが重要です。
若年者の場合、採血でフェリチン低値など明らかな鉄欠乏があれば補充することをまず行います。

中高年以降の薬としてはドパミン補充としてパーキンソン病の薬が有効です。パーキンソン病の薬はごく少量で効果があります。またけいれん止めの薬もよく効くことがあります。
多種類の内服をしている方は薬剤性かどうかを必ずチェックします。

70代男性で冠動脈疾患の患者さん。ある時期から寝るときに脚がむずむずして気持ち悪い、と言われました。むずむず脚症候群の特徴がすべてそろってましたので、ドパミン受容体作動薬(ビシフロール)を少量開始するとすぐに良くなりました。なおビシフロールには保険適応外ですが快眠効果もあります。

50代で肥満、糖尿病、高血圧の患者さん。以前から足の調子が悪く整形外科に通院されていました。脚のしびれ、痛み、不快感、不眠など不定愁訴が多く、諸検査で問題なく経過を見ておられました。よくお話しを聞いてむずむず脚症候群を疑い、クロナゼパム(リボトリール)を開始しましたが効果はイマイチ。ビシフロールに変更したところご本人も満足されました。

60代女性、健康な方ですが、最近両下肢の不快感、しびれ、ピリピリ感、痛み、不眠が出てきました。鉄欠乏や下肢の血流異常、あるいは脊柱管狭窄症を除外した上でむずむず脚症候群を疑いました。ビシフロール少量でも強すぎて傾眠傾向、リリカ全く効果なし、リボトリール眠くなる、など改善しない症例もあります。
このようなケースは専門家に相談し、各種画像診断やPSG検査での異常、神経伝達検査・体性感覚誘発電位検査などを行った上での診断・治療が必要と考えます。

脚がむずむずする場合、さまざまな検査をして病気を除外する必要がありますが、何も異常がない場合はむずむず脚症候群というのがあることを覚えておいてください。ちょっとした薬をのむことで楽になることがありますので。