これって低血糖

朝起きても食欲がない、唾液が出ない。
夜更かししてテレビ見ていたら、ダラダラと食べてしまう。
夕方になると早口でハイテンションになりモノをよく落とす、家の人に当たり散らす。

これらに共通するものは低血糖かもしれません。

血糖値とは血液中のブドウ糖の濃度のことです。通常は70~140mg/dlになるように調整されています。
糖尿病はインスリンの働きが弱って血糖値が慢性的に高くなる病気です。生活習慣病の代表で放置しておくと血管中心に合併症が起こってきます。日本では約1000万人の方が糖尿病です。インスリンが何とかよく効くように昔から研究されています。

血糖値が高いと悪者に思われますが、ブドウ糖はエネルギーを作り出す非常に重要な物質です。常にある程度の濃度以上が必要です。特に脳が働くにはブドウ糖は必須なのです。血糖値は下がりすぎると絶対に良くないのです。

血糖値を下げるホルモンはインスリンだけ、一方上げるホルモンはグルカゴン、コルチゾール、アドレナリン、成長ホルモン、甲状腺ホルモンなど多数あります。すなわち人間の体は低血糖にならないように厳重にガードされているのです。昔食べ物に困っていた時代に体にそなわったメカニズムなのでしょう。飽食の時代と異なり糖尿病などありませんでしたから。

夜の話。普通は夕食後は何も食べません。するとブドウ糖は枯渇し、筋肉や肝臓に蓄えられていたグリコーゲンが動員され血糖値を維持します。でもそれだけでは寝ている間の血糖値は維持できません。夜寝ると2時間ほどして成長ホルモンの分泌が高値になります。また副腎皮質からでるコルチゾールは夜中から朝にかけてじわじわ上昇し朝8時に最高値になります。この二つのホルモンが血糖値を上昇させる方向に働いて夜間の低血糖を防いでいるのです。

副腎疲労といって頑張りすぎ、ずっとストレスが続く、などで副腎からでるコルチゾールがうまく出なくなっている場合があります。(唾液中のコルチゾールの日内変動をみるとよくわかります)話が長くなるので詳しくは述べません。このような人は先ほどの成長ホルモンが出終わった後、コルチゾールで血糖調整をしないといけないのですが、うまく働きません。そしていよいよ明け方になり血糖値が維持できなくなると、今度は副腎髄質からアドレナリンというホルモンが出てきます。アドレナリンが出すぎると血糖値は維持できるのですが、唾液が出なくなり、消化管の運動は止まります。筋肉に力が入り肩こり、頭痛が出ます。

というわけで、朝起きても口がカラカラで唾液が出なくて、食欲がない若い女性は実は夜間低血糖かもしれないのです。

成長ホルモンはぐっすりと寝ている夜遅くに分泌されます。その時間帯にテレビ見たり、ゲームしながら夜更かししていると血糖値を上げるホルモンが働かず血糖値が下がってきます。ストレスがあり夜更かししていると副腎の働きも悪くなりコルチゾールも規則正しく出ません。だらだらテレビを見ていると知らないうちに血糖値が下がってきます。そこで何とか血糖上昇させるために自然と食べたくなるのです。ポテトチップスをつまみながらちびちびと酎ハイを飲んで血糖値を上げているのです。

日中の話。3食食べて血糖値が上昇し各臓器に分布すると,、その後血糖値は下がります。そこで肝臓に蓄えられているグリコーゲンが動員されます。ただしそれも切れてしまうといよいよ低血糖になるのです。

血糖値は朝が高く夕方4時ごろ最も低くなります。夕方はコルチゾールの自然分泌も低下してきており血糖値は必然的に下がります。気分がソワソワしてきて、手足が震える、無性に何かを食べたくなる衝動に駆られます。

これだけなら良いのですが血糖値を上げるためにアドレナリン、ノルアドレナリンが動員されます。そうすると血糖値はやや上昇し空腹感はなくなるのですが、気分は高揚しハイテンションとなる一方で、気に入らないことがあると近くの人に当たり散らすことがあります。子供にあたっている場面が良くありますね。

これも日中の低血糖が原因なのです。

ではどうやってこれらを治していくか。これが実は難しいのです。血糖上昇させるホルモンのうちコルチゾール、成長ホルモンが重要で、これらが正常に稼働すると大丈夫なのですが、慢性的なストレスで崩れてしまっているとうまくいきません。

そこで手っ取り早い方法は補食です。食事と食事の間に少しでもいいのでカロリーを入れてやることです。なんでもよいのではなく最も効果的なのは、はちみつです。カロリー源として炭水化物(糖質)、タンパク質、脂質がありますが糖質が最も早く効果的に吸収され脳や筋肉を働かせます。はちみつは単糖類で細胞の吸収が速いのでその後のインスリン分泌が多くなることは少ないです。はちみつがない場合は小さなおにぎりでも良いのです。

朝起きて食欲ない、唾液が出ない人はまず起床後はちみつを小さじ一杯。これですみやかに血糖が良い具合に上昇し、脳、筋肉を働かせます。余分なアドレナリンが抑えられます。そして唾液分泌が戻り食欲も出てくるのです。(寝る前にも、はちみつを食べて寝ると朝元気ですよ。)

夕方になると焦燥感に駆られる、周りの人に当たり散らす、イライラしてくるような人も3時のおやつ、だけではなく2時、4時に、はちみつを食べてはどうでしょうか。3時のおやつで食べ過ぎてしまうと、血糖値は上がりますがインスリンがたくさん出てその後再び血糖値が下がってしまいます。夕食を作っている時間帯に最高にイライラするかもしれません。

内科の患者さんを診ていると血糖値が高いことが問題である糖尿病が非常に多いです。しかし若年者で体調のすぐれない人、40代までの特に女性は、血糖値を維持することが困難で体調不良となっていることも実は多いのです。
これを読んで、あっ、そうだったのか。と思っていただければ幸いです。