発熱外来の今

毎朝、発熱患者さんの電話でクリニックの1日が始まります。
当院は幸い裏手に別のスペースがあり、一般患者と分けて発熱患者を診ることができます。
発熱外来を始めて2年。様子が変わってきました。

2年前、コロナがデルタ株で、重症化のリスクもあったころは常に緊張状態が続いていました。
「今から発熱の方が来られます」
患者さんも熱、咳があるだけで特別扱いされ、検査で陽性が出ると私も恐れ戦いていたことを思い出します。

それから2年経過し、コロナはただのカゼになりました。ただしカゼでも高齢者は一定数重症化し、感染力が強いので、感染症病棟が必要で現在病床使用率が上がってきています。
普通は数日すれば体調はほとんど戻ってきます。発熱外来に来られてコロナと診断しても、インフルエンザのような抗ウイルス薬があるわけではなく、通常の解熱剤の処方しかできないのが現状です。

今では多い日で約40名の発熱患者が来られます。
一人でやっている開業医は結構この数はキツイです。内科・循環器内科の通常の患者さん、4回目のコロナワクチン接種、企業健診、に加えて発熱外来ですから。コロナ陽性患者の届け出の事務作業もあります。

当院ではコロナの判定は抗原検査で行っています。わざわざPCRしなくても抗原定性検査で十分だからです。
抗原陽性の時は感染力がある、陰性化すると感染力がなくなる、単純にこう考えています。
ただし明らかに症状のある方で抗原検査をすり抜けてPCR陽性となることがあり、必要に応じてPCRを併用しています。
それと、全くの無症状者は抗原定性キットでは陽性にはなりません。

テレビは極端な例のみ報道しますので、発熱外来4時間待ち、あるいは3日電話したけれど予約でいっぱい、など。
当院ではまずお断りすることもなければ、待ち時間も長くて30分程度です。それでも暑い中、外でお待ちいただき申し訳ございません。

問診でワクチン接種の有無を聞きますが、接種者、未接種者ともにコロナにかかる頻度は変わりない印象です。またワクチン接種で重症化を防ぐ、といった印象もありません。ただし高齢者はワクチンの予防効果はそれなりにはありそうです。(クリニックレベルの話なので全体の正確な統計ではありません)
でもなぜか、「ワクチン4回も打ったのにコロナになった」と怒る方はおられません。

患者「もう熱は下がって症状もほとんどないのですが検査してもらえますか」
私「コロナ陽性です。すみませんが一応、症状出た日から10日間は自宅にいてくださいね、感染力強いので。」

患者「微熱程度なのですがコロナかどうか保険会社に提出しないといけないんです」

最近では保険会社に出すので、といった話が増えてきました。自宅療養でも入院扱いになるそうですから。

当院かかりつけの患者さんにはコロナに罹った経過を詳しくお聞きします。「ワクチンの熱より楽だった」、「熱は2~3日だったがその後結構しんどかった」、「1ヶ月しても咳が残る」など様々です。
お一人、私と同年代の患者さんが入院された、とお話しされました。コロナと判定した日は非常にお元気だったのですが、肺炎にでもなったのかと心配してお聞きしたところ、

患者「保健所の先生?が基礎疾患があるので入院、と言われたんです。元気なので入院は・・・と断ったのですが、基本入院ですと言われました」
患者「結局入院しましたが、病棟はガラガラで入院は私一人で快適でした。最初から元気でしたから。」
私「そうでしたか・・・・・・」
1ヶ月前のお話しです、まあ今はベッドは埋まっているのでしょうが。

先日知り合いの勤務医の先生と話ししていたら、「子供がコロナになって濃厚接触なので5日間自宅待機、その後もう一人の娘がコロナになったので、また自宅待機。2週間病院行けてないんですよ。もし僕がかかったらさらに10日間待機です。」、と。
そんなアホな。これじゃ本当に医療の必要な患者さん、医者がいなくて可哀そうすぎるわ。

鼻くちゅくちゅして「はい、コロナです。カロナールでの飲んでお休みください」あるいは「陰性なのでコロナではないんでしょうね。」これではダメですね。

コロナ以外の発熱する病気を除外し、適切な治療にもっていくことが発熱外来の本来の役目です。
コロナ判定するだけなら抗原キット配って自分で判定すれば医者は必要なくなりますから。
急性腎盂腎炎、咳のない肺炎、急性肝炎の初期、ちょっと見たらわかる蜂窩織炎、などなど。家で寝てたら治るコロナと、そうでないものを鑑別しなければなりません。当院ではコロナ陰性の場合でも、他の疾患が疑わしい場合は採血、その他の検査をするようにしています。