肥満の注射薬
もともと糖尿病薬として用いられてきたGLP-1受容体作動薬を用いた自費の肥満治療が、ここ数年で急速に広がっています。少し解説してみます。
GLP-1やGIPとは、もともと私たちの腸から分泌されるホルモンで、食欲を抑え、胃の動きをゆるやかにし、血糖値を安定させる働きがあります。この作用を利用した注射薬が肥満治療に使われています。代表的な薬には、GLP-1受容体作動薬のウゴービ(セマグルチド)や、より強い減量効果が報告されているGIP/GLP-1受容体作動薬のゼップバウンド(チルゼパチド)などがあります。臨床試験では、体重の10〜20%程度の減少が示されており、従来の食事療法や運動療法のみでは難しかったケースでも効果が期待できます。
GLI-1は食後に腸から出るホルモンで、食欲を抑え、胃の動きをゆっくりにする、インスリンを出しやすくする、働きがあります。
GIPも食後に腸から出るホルモンで、インスリン分泌を助ける、脂肪の使われ方を調整する、働きです。
GLP-1は食欲ブレーキ担当、GIPは代謝サポート担当です。
GLP-1単独よりもGIPを組み合わせると最強になります。まだ治験段階ですが、GLP-1+GIP+グルカゴンの最強のトリプル製剤もあります。
現在肥満に対して保険適応があるのはウゴービとゼップバウンドです。ただしどちらも使用には厳しい基準があり一般のクリニックでは保険では使用できません。
あくまでも肥満症治療として処方され、食事・運動療法を半年行っても十分な効果が出なかった場合に使われます。1回でも栄養指導を飛ばしたらまた最初からです。
しかしウゴービもゼップバウンドも実は糖尿病の患者さんに以前から使用されています。
ウゴービ(セマグルチド)は内服のリベルサス、注射薬のオゼンピックと中身は同じです。ゼップバウンド(チルゼパチド)は注射薬のマンジャロと同じです。
じゃあ、中身が同じなら保険で処方してくれないの?と考えるところですが、絶対にダメです。保険診療には必ず適応病名がありますので処方はできません。
それとウゴービを継続していて中止すると体重がもとに戻ることが多いです。これは生活習慣を変えなかった場合に多いのです。では永遠にウゴービを注射しつづけるのは?と考えますが、今のところウゴービは68週までが基準となっています。それは日本人でそれ以上投与した場合の効果が蓄積されてないからです。
GLP-1治療は、あくまで生活習慣改善をサポートする手段のひとつです。食事内容の見直しや筋力維持のための運動を並行して行うことで、より安全で持続的な減量につながります。本気でダイエットしている患者さんと話をすると皆さん涙ぐましい努力をされています。決して週1回注射するだけで一生安泰ではありませんよ。
最近米国でウゴービの内服薬が発売されました。24mg錠らしいです。えっ、リベルサス14mgとそれほど差がない?かもしれませんね。
内服薬と注射薬では吸収率が異なります。例えば糖尿病用のリベルサス14mgを毎日内服すると1週間で98mg、吸収率を多く見積もって1%としても体に入るのは週に1mg、一方ウゴービの2.4mgを週1回使用すればほぼそれだけ体に入るので3倍程度あるいはそれ以上の効果の差があります。少し食欲を抑えたいならリベルサス、しっかり減量するにはウゴービですね。以上は余談です。



