ビタミンCと心臓病

アメリカの循環器専門医であり弁護士でもある、トーマス・レビーという先生がおられます。ビタミンCの持つ素晴らしい治療効果、の啓蒙活動を行っておられます。私も実際に講演を拝聴し、懇親会で苦手な英語で質問したこともありますが、それよりも先生の著書を読み返して勉強しております。

循環器専門医でもあるレビー先生がビタミンCと心臓病について非常にわかりやすく解説しておられます。本日はその話を書きます。

ここでいう心臓病とは、心臓表面の冠動脈の動脈硬化から生ずる狭心症や急性心筋梗塞などのことです。
一般的には酸化ストレスにより変性を受けた悪玉コレステロールが冠動脈壁に貯まることにより動脈硬化プラークが生ずる、と理解されています。それはそれで正しいことなのですが、冠動脈の壁の中に脂質が貯まるには、冠動脈の内張りされた細胞(血管内皮細胞)が剥がれなければ最初のステップがおこらないはずです。

レビー先生は次のように説明しておられます。

図に示すように心臓表面の冠動脈は3層構造をしています。一番内側の内皮細胞は浴室のタイルのような働きをしており、内皮細胞どうしの隙間や裏側にはゲル状の物質(基質)が存在し、細胞の固定に必要不可欠です。ところが基質がゲル状から液状になってくると血管内皮細胞に物質が流れ込む隙間ができタイルが剥がれるようになり、余分な脂肪が入り込みやすくなります。そうするとプラークが形成され、それを補修する目的で身体は大量のコラーゲンを血管壁に作り、そのため動脈壁は固く、厚くなるのです。ビタミンC不足は局所の壊血病状態なのです。これが冠動脈硬化の最初のステップです。
逆に冠動脈内にビタミンCが豊富に供給されていれば健康でゲル状の基質が維持でき、浴室のタイルはしっかり固定され脂肪が入り込めない血管になります。ビタミンCを豊富に継続的に供給する治療で冠動脈プラークを安定化させ、冠動脈狭窄を退縮させた例を報告しています。

それともう一つ、ビタミンCは丈夫で弾力性のあるコラーゲンの合成と維持に必要です。コラーゲンは動脈壁を構成する主要成分の一つであり、ビタミンCが不足し続けるとコラーゲンの量と質が低下してプラークの補強ができなくなり、プラークが際限なく成長していきます。

そして動脈のビタミンC欠乏を引き起こす特殊要因として劣悪な口腔環境、アマルガムの詰め物、歯周病、根幹治療を挙げています。これらはビタミンCを破壊する毒素や病原体を絶えず大量に放出し、その毒素や病原体が最初に到達するのが冠動脈なのです。
冠動脈の基質とコラーゲンを正常に保つためのビタミンCが、押し寄せた病原体や有害な毒素の中和に利用され、その結果冠動脈の局所的なビタミンC欠乏が続き、冠動脈硬化の初期段階に進んでいくのです。

冠動脈硬化の危険因子としてLDLコレステロール高値、高血圧、糖尿病などがあり、是正することが必要です。それはいいのですが、心臓病にならないもっと重要なことは、一番最初のステップとして内皮細胞が剥がれないように局所のビタミンCを十分供給することです。そして血管局所のビタミンCの供給を阻害する要因としての口腔内環境を清潔に保つことが必要なのです。

梅雨空の切れ目 錦江湾上空