いびきと心臓病(2)

前回の続きです。
いびきと関係のある心臓病は不整脈、狭心症、心不全、高血圧、大動脈疾患などです。

心房細動は脈がバラバラになる、頻度の高い不整脈ですが、心房細動が続くと心房に負荷がかかり徐々に心臓が大きくなります。脈が速い状態が続くとさらに心臓全体に負荷がかかり高齢ですと心不全になります。いびきが強く、SAS(閉塞性睡眠時無呼吸症候群)があると夜間、胸腔内が強い陰圧に傾き、心房にさらに負担をかける方向に働きます。

心房細動の治療にカテーテルアブレーションがあります。心房細動を発生させる電気の通り道をブロックし、異常な放電がおこらないようにする治療です。カテーテルアブレーションを行い心房細動が治癒しても、SASがあると心房細動の再発が増加したとの報告があります。
心房細動でいびきの強い人は、まずはSAS検査をして無呼吸の治療を行っています。

冠動脈疾患(狭心症や心筋梗塞)は心臓の表面にある冠動脈の動脈硬化により起こる病気です。冠動脈疾患があり、いびきの強い人は、SASに関連した低酸素や心拍数上昇により夜間のみ心筋虚血が出現する可能性があります。SASを有する冠動脈疾患はSASを伴わない冠動脈疾患の患者さんと比較して予後が悪いとの報告があります。

また冠動脈の動脈硬化が軽度でも、冠動脈が痙攣することで起こる冠攣縮(かんれんしゅく)性狭心症というのがあります。この発作は深夜から明け方に多いのですが、SAS合併の冠攣縮性狭心症では、CPAP治療することで発作の頻度が減少したとの報告もあります。

冠動脈疾患の患者さんは、動脈硬化の発症素地として高血圧や糖尿病を合併していることが多いので、いびきが強くSASを合併している冠動脈疾患の方は、交感神経の過剰な活動を抑えることが高血圧や糖尿病の進展抑制にも効果があるのです。

急性大動脈解離は突然死の原因となる疾患です。高血圧の持続、大動脈弁逆流、そしてSASによる胸腔内陰圧などで徐々に心臓から出る大動脈の径が大きくなります。血管の壁が引き延ばされ脆弱になり、ある時急に解離を起こします。
SAS合併群では大動脈径が、SASのない群よりも大きいとされています。SASがあると胸腔内が陰圧になり大動脈が外に向かって引っ張られるので徐々に径が拡大していきます。CTで大動脈が軽度拡大している方にはSAS検査を行います。あるいは大動脈解離を起こしたことのあるSAS患者さんにはCPAPが必須であると考えます。

「いびき」はうるさいだけではなく、恐い病気が潜んでいることもあります。
一度検査されてはいかがでしょうか。