いびきと心臓病

いびきと心臓病のお話しです。

いびきは、眠った時にのどを支えている筋肉が緩むことで、空気の通り道が狭くなり、のどが振動して音がでることです。もともと日本人は顎が小さい人が多く、肥満、飲酒、睡眠薬によっていびきが出現しやすくなります。

いびきは周囲の人を不快にするばかりでなく本人にとって危険なことも多いのです。
このいびきは夜間の睡眠呼吸障害(睡眠時無呼吸症候群)を通じて心臓病と密接に関係しているのです。

心臓病の人はいびきが多い、いびきの多い人はそのうち心臓が悪くなる、どちらも概ね正解です。
いびきの多い人は睡眠中に無呼吸があることが多く、睡眠時無呼吸症候群のほとんどの人はいびきを認めます。

睡眠時無呼吸症候群(略してSAS)、正式には睡眠呼吸障害、ここではSASとよびます。
睡眠中(特に夢をみている時間帯)に喉の筋肉が緩むことでいびきに続いて無呼吸が起きます。
具体的なSASのイメージは、一晩中、口と鼻を誰かに押さえつけられその後手を放す、この繰り返しです。押さえつけが不十分な時はいびきをかく感じです。

SASの重症度として1時間当たり10秒以上呼吸していない時が何回あるかという考え方です。10秒以上といってもひどい人は2分息が止まっていることがあります。昼間なら2分息ごらえはできません。夜は眠っているからそんなことが起こるのです。長時間呼吸が停止すると体内の酸素がどんどん下がって二酸化炭素が上昇します。体の防御反応で交感神経を最大限活性化します。体が我慢できなくなると呼吸が再開します。その後また繰り返します。

鼻と口を押えられて呼吸してください、といわれたらどうしますか。
胸腔内が思い切り陰圧になります。生理的な呼吸の数十倍の陰圧にあるといわれています。

心臓病には様々な種類があります。冠動脈疾患(狭心症・心筋梗塞)、弁膜症、不整脈(特に心房細動)が多いです。これらが組み合わさり、あるいは単独で徐々に心臓のポンプ機能が低下してくるのが心不全です。
冠動脈疾患は糖尿病、高血圧症、脂質代謝異常など生活習慣病がベースにあります。弁膜症は加齢による弁の変性が主体です。

心臓病になると体の反応として交感神経を活性化させて心臓の機能を上げる方向に働きます。心臓は体中に酸素を送るための臓器ですので、酸素が低い状態は困るのです。心臓は収縮することで機能しますので、胸腔が激しい陰圧になると都合が悪いのです。(心臓収縮と反対方向の力が加わりますから)
心不全の治療としては交感神経の過剰な興奮をできるだけ休ませ、酸素を十分に与え、心臓収縮に不利になるような過度の胸腔内の陰圧は避けることが基本で、その次に薬です。

ですので、重症のSASでいびきがひどいと、寝ている時に低酸素状態となり、過剰に交感神経が興奮し、また無理な努力呼吸で胸腔が陰圧になることで、心臓にとっては非常に都合が悪いのです。