女子の健診

雇入れ健診が増えてきました。本日は女子の健診の話です。
女子といっても20~40代女性のことです。
健診では採血で
ヘモグロビン、赤血球数、AST、ALT、γGTP、HDL、LDL、TG、血糖値
の項目を調べます。
ヘモグロビン・赤血球数は貧血を、AST・ALT・γGTPは肝臓を、HDL・LDL・TGは脂質異常を、そして血糖値は糖尿病を見ています。一般的には。
通常基準値より高ければ、例えば肝障害、脂質代謝異常などと記載され病院受診を進められます。でも不思議なことに基準値より低くても何も指摘されないのです。
メタボの男性はそれでよいのですが若い女性はそれではいけません。

ヘモグロビン・赤血球数
多少低くても、女性だからね・・・とスルーされますが、低いと大いに問題ありなのです。赤血球は鉄を素材に作られます。若い女性はとにかく鉄が不足しています。鉄不足になると体の中にある鉄の定期預金(フェリチンといいます)を使い果たしてしまい、その日暮らしの生活になります。ここで初めてヘモグロビンが減少します。ヘモグロビンが正常値であっても鉄不足になると、肌荒れ、湿疹、髪の毛が抜ける、カゼを引きやすい、感情の起伏が激しい、などの症状がみられます。特に氷を好み始めると深刻な鉄不足です。でもその状態に慣れてしまっているのです。
本当はフェリチンを測定しなければなりません。少しでもヘモグロビンが下がってくれば受診してフェリチンを測定してもらってください。
それともう一つ、健診では測定しませんが赤血球の容積MCVを見ておく必要があります。このMCVが重要で鉄不足の場合、多くはMCV70台になりますが、鉄不足が深刻(フェリチンが低い)にも関わらずMCVが正常か高い場合は同時にビタミンB12あるいは葉酸が欠乏している場合が多いのです。

AST・ALT・γGTP
メタボのおじさんたちはこれらの数値が高いです。脂肪肝、アルコール、もっと深刻な肝疾患など。でもこれも高いばかりが異常ではありません。女子の健診ではAST・ALTが低い人だらけ。
理想的な値はAST=ALT=γGTP=20 なのです。
AST>ALT で特に ALT がひと桁の場合ビタミンB6欠乏です。ビタミンB6は神経伝達にとても重要な物質で、B6だけが低いことはなく大抵はビタミンB群(1、2、3、5、6、12)すべてが低いことが多いのです。ビタミンB群は炭水化物、タンパク質、脂質からエネルギーを産生する際に補因子として働き、脳の神経伝達物質の産生にも重要な働きを担っています。なのでビタミンB群が低い女子はだるい、寒い、鬱っぽい、その他さまざまな症状が現れます。

HDL・LDL・TG
これらは脂質代謝のマーカーとして重要です。特にLDL-コレステロールは悪玉などと悪評高いマーカーで、119mg/dlを超えると脂質代謝異常という病名がついてしまい、病院に行くと最悪の場合はコレステロールを下げる薬まで出されてしまいます。
ただし女子では約半分の人が119以上なのです。半分の女子が脂質代謝異常???
でもご安心ください。コレステロールは60兆個ある細胞の細胞膜の成分であったり、胆汁やステロイドホルモンの原料となる重要な物質なのです。女子が少々LDLが高くても放置でいいのです。LDLコレステロールが低すぎる女子は栄養不足なのです。

血糖値
健診の採血では多くは朝空腹時に採血することが多いのですが、健常な女子の空腹時血糖は概ね75~95mg/dl程度でないといけません。
おじさんたちは高ければ問題あり、ですが女子の場合は低ければ問題です。空腹時血糖が70未満の場合は血糖値の維持ができていないのです。
食後血液中のブドウ糖が消費されさらに肝臓や筋肉のグリコーゲンも使い果たされると、糖質以外から糖を作ります。これを糖新生といい飢餓に対抗する重要な仕組みです。ところが糖質ばかり食べて筋肉が少なくビタミン不足の女子は、糖新生がうまくできないのです。そのため空腹時血糖が維持できず低い値になります。お腹がすくので炭水化物をたくさん食べると血糖値が上がり体は満足するのですが、その後反応性に低血糖に陥り、イライラしたり、不安になり手が震えてくるのです。そこでまた糖質を食べる悪循環に陥ります。

おじさんと女子は健診で同じ項目を測定しますが、おじさんは数値が高いとダメ、女子は数値が低いとダメ、と簡単に理解してください。あとはかかりつけの先生にしっかり結果を解釈してもらい生活指導をしてもらいましょう。決して薬なんてもらってはいけませんよ。