肺炎ってうつるの?

(答え)カゼはうつりますが、肺炎は通常うつりません。

コロナ騒ぎ以降、熱のある人・カゼ症状の人は一般の外来患者さんとは別に(可能であれば別の部屋で)、発熱外来として診ることが一般的になりました。それまでは寒い時期にはゴホゴホ咳しているインフルエンザの患者さんの隣に、肺や心臓の悪い方が座っていましたから。

発熱外来といっても様々な病気の方が来られます。本来は人に感染させる病気だけ隔離して診ればよいのですが、そう簡単にはいきません。

熱があって喉・咳の症状の方は大体は普通のカゼ、それに加えてコロナは増減はあるものの常におられます。今年はインフルエンザも夏からチラホラ出ています。その他溶連菌感染やマイコプラズマ。中には肺炎の方おられます。

何もしなくても自然に治るカゼ・コロナ・インフルエンザと、抗菌薬を投与しなければ治らない肺炎は区別する必要があります。

カゼはウイルス性(自然に治る)に対して肺炎の多くは細菌性であり抗菌薬が必要です。
カゼは鼻粘膜・咽頭粘膜、ときに気管支にウイルスが感染することで症状が出ます。

肺炎は細菌が肺胞の奥深くまで入り込み炎症をおこします。口や鼻から入った細菌が、たまたまその人の免疫を潜り抜け肺胞で増殖し、細菌の兵力>その人の免疫力、となった時に肺炎はおこります。大切な臓器での炎症なのでそれなりに症状がでます。

カゼはウイルス性なので人にうつりますが、肺炎は飛沫でその細菌が他人に入ったとしても殆どが肺に届くまでに処理されてしまい肺炎となることはありません。だから肺炎は一般的にはうつらないのです。

もともとカゼと肺炎は全く別物なのです。カゼをこじらせても肺炎にはなりません。(まあ高齢の患者さんにそのように説明する場合もありますが)カゼはこじらせても勝手に治ります。
正しくは肺炎の初期症状としてカゼに似た症状があった、でしょう。
例外としてインフルエンザのあと細菌性肺炎にかかりやすいことはあります。

ではコロナは感染力が強いからコロナ肺炎もうつるのでは?

一般的にウイルス性の肺炎はウイルスが直接肺胞に入り込んで増殖するというよりもウイルスと人間の免疫との闘いにより肺胞が破壊されることで起こります。通常コロナ・インフルエンザとしては感染しますが、コロナ肺炎の人のそばに行くとコロナはうつるかもしれませんが、コロナ肺炎になる、というわけではありません。

肺炎の分け方は色々あるのですが罹患場所により、市中肺炎、院内肺炎、医療・介護関連肺炎など
起炎菌により、細菌性肺炎、非定型肺炎、ウイルス性肺炎、真菌性肺炎など
その他重症度分類もあります。

発熱外来にカゼ症状で熱のある患者さんがこられました。一見したところ元気そうであればカゼ薬で帰宅、そのまま自然に治ります。抗菌薬は不要です。

熱が数日続く・咳が止まらない・しんどくてたまらない、ような場合はコロナ・インフルエンザの否定を行った後採血をします。採血して問題なければ1,2日様子見。採血で炎症の数値(CRP)が上昇していた場合は胸のレントゲンを撮ります。肺炎なら大体診断がつきます。

注意したいのは高齢者で肺疾患をお持ちの方は軽い肺炎になっても若者のような症状は出ないことが多いです。普段より歩くと息が切れる、今日は痰が多い、体が少し熱い。そのようなケースでは症状が軽くても採血、レントゲンを撮ります。肺炎の初期であることが多くしっかりと抗菌薬を出さなければいけません。カゼですね、大丈夫ですよ、ではないのです。

普通にクリニックに来られる方は市中肺炎で肺炎球菌・インフルエンザ菌(インフルエンザウイルスとは別物です)・ブドウ球菌・マイコプラズマなどが起炎菌です。
しっかりと抗菌薬を処方して安静にすれば治ります。
少し難しいのが抗菌薬の選び方。通常の市中肺炎とマイコプラズマなどの非定型肺炎では抗菌薬の効き方が異なりますのでしっかり選んでもらってください。

肺炎ってうつりますか、と患者さんからよく聞かれるのですが、一般的にはうつりません。非定型肺炎であるマイコプラズマ肺炎は感染力は弱いですがうつることはありますよ、と説明しています。