ライム病

ライム病、とっても爽やかな病気のように思えますが、実際には厄介な病気です。今年9月にある芸能人がライム病に罹っていることがわかり一瞬有名になりました。

ライム病はスピロヘータであるボレリアを原因とする感染症でダニが介在します。野山に生息するダニに噛まれた際、ダニの体内にいる病原体が人に入ってくるために起こります。ダニ媒介感染症といいます。

ダニが媒介する感染症はツツガムシ病、日本紅斑熱、重症熱性血小板減少症候群などが有名ですが、ライム病もそのひとつです。ライム病を媒介するのはシュルツェマダニというマダニですが、マダニは動物の血を吸って成長するので動物が生息している場所に潜んでいます。

ライム病は1976年に米国コネチカット州ライム地方で発見されました。若年性関節リウマチ様の疾患として報告されました。米国北東部で多発し年間数万人の患者数です。媒介するダニの生息分布によるものといわれています。我が国では報告数は年間10名程度ときわめて少なく、北海道からの報告が主です。ただし本州、九州からの報告もあります。海外渡航後あるいは日本の標高の高いところでハイキングをした、ダニに咬まれたかどうかわからない、こんな場合には発症してもおかしくはありません。診断が困難ですので実際の患者数は非常に多いと考えられます。

ライム病の症状として3つの時期に分かれます。第I期(局在期)として感染初期には遊走性紅斑と呼ばれる特徴的な弓矢の的状の皮疹が現れることが多く、その他に発熱・筋肉痛・倦怠感といったインフルエンザ様の症状が現れることがあります。
約4週間後の第II期(播種期)には病原体が全身に拡がり、神経症状・眼症状・関節炎など多彩な症状が現れます。
半年以降の第III期(慢性期)には全身の疼痛、全身倦怠感、集中力低下、うつ症状、関節リウマチ様症状といったさらに多彩な症状を呈してきます。

ダニに咬まれただけでなぜこうなってしまうのか徐々にわかってきました。ダニが媒介するボレリア菌が入ってくる過程でボレリアだけではなくバベシア(原虫)、バルトネラ(グラム陰性桿菌)、マイコプラズマ、この4つが混合感染を起こしている可能性が示唆されています。それぞれの病原体が得意とする症状が組み合わさり多彩な症状が出てくるのです。もともとのボレリア菌だけが敵ではないのです。

なおボレリア菌は嚢胞型、スピロヘータ型、細胞壁欠損型に変化し、抗生物質が効きにくいだけではなく免疫系による標的化が困難となります。ボレリア菌の表面抗原とリンパ球の抗原が類似していて自分のリンパ球を攻撃し自己免疫っぽくなることもあります。このようにボレリア菌ひとつにしてもなかなかゴールにたどり着けないのです。

ライム病の治療は、他の病気と同様、自身の抵抗力を上げる必要があります。薬だけで良いというわけではありません。化学物質を避けGFCFの食事による腸内環境安定化、体内のデトックッス、体内の炎症除去を行いながら、ボレリア・バベシア・バルトネラ・マイコプラズマに対する抗菌薬を順次試していくことが必要です。慢性ライムの治療には2~3年かかるといわれています。

あちこちが痛い・集中力がない・すぐに疲れる・うつっぽい、このような症状の方はどこを受診してもなかなか改善しません。関節リウマチ、線維筋痛症、慢性疲労症候群、うつ病そのものかもしれませんが、ダニが媒介する感染症としてライム病の存在も頭の隅に入れておいた方が良いかもしれません。