喉が痛い、甲状腺?

5月8日からコロナが5類となりテレビではコロナは過去の病気のように伝えますが、最近また増えてきています。コロナが2類の時期は皆さん医療機関を怖れて、医療行為が必要な高齢者も少々の熱では来られなかったのですが、なぜか最近はちょっと鼻水が出る程度で来院されます。

カゼの症状として喉、鼻水、咳、痰が代表的な症状ですが、喉が痛いに注目してみます。
喉は鼻から食道・気管までの部位で咽頭と喉頭からなります。
咽頭は鼻から食道へとつながる食べ物や飲み物の通り道で、嚥下の機能を担っています。その途中に扁桃腺があります。
喉頭は喉仏のあたりにあり呼吸の機能を担っています。飲み込んだものが気管に入らないように蓋をする喉頭蓋と声を出す器官である声帯があります。
喉は鼻と口から気管と食道までの通りで、呼吸と嚥下と発声という3つの役割をもってます。

カゼをひくと喉が痛くなります。最初は喉がイガイガ、そのうち飲み込んだら痛い、さらに声が出ない、となります。飲み込んだら痛いは、咽頭の下の方までの炎症、声が出ない、は喉頭の声帯まで炎症が及んでいます。

私のような内科医が口あーんと開けて、といって観察できるのはせいぜい中咽頭(のどちんこ、扁桃腺、舌根および側壁)です。上咽頭や声帯は耳鼻科でないと見えません。
カゼは最初はウイルス感染が主体で喉の粘膜がやられます。それが治ると良いのですが障害された粘膜に細菌感染が起こると次のフェーズとなり抗菌薬を用いる必要があります。扁桃腺が赤く腫れあがって、白いものが付いてくるとしっかり抗菌薬を投与する必要が出てきます。

喉が痛いときに皆さん色々な表現をされます。イガイガする、ヒリヒリする、飲み込むと痛い、首の横が痛い、喉仏が痛い、など。のどぼとけ(医学用語では喉頭隆起と言います)を押えて痛い、という人はちょっと注意が必要です。喉頭隆起(のどぼとけ)を押えて、あるいは喉頭隆起の周囲が痛いときは喉(咽頭・喉頭)ではなく甲状腺が痛い場合があります。

亜急性甲状腺炎という病気があります。甲状腺はのどぼとけの下にある蝶のような形をした大切なホルモン臓器で甲状腺ホルモンを産生しています。甲状腺ホルモンは心拍数・体温・自律神経の働きなど体の新陳代謝を調整しています。甲状腺ホルモンが過剰になると疲れやすい、しんどい、動悸、汗をかく、息切れ、下痢など。不足するとその反対になります。

亜急性甲状腺炎は甲状腺の痛みや発熱を伴い甲状腺に炎症が起きる病気です。30~40代の女性に多く、カゼに引き続き起こる場合があります。原因ははっきりしませが何らかのウイルス感染であるといわれています。
のどぼとけの下周辺に圧痛がある場合や、何もしなくても胸や肩に痛みが放散する場合があります。また左右どちらかが痛いこともあります。微熱が続く場合が多いです。
甲状腺が炎症を起こすので蓄えられていた甲状腺ホルモンが一時的に過剰となり、動悸、息切れ、しんどさといった甲状腺機能亢進症状を起こします。次第に甲状腺の痛みは減少し、その後甲状腺機能は低下する時期を経て、2~3か月で正常に戻ります。

喉が痛い、熱がある、といった症状は普通はカゼですが、喉ぼとけあたりが痛い、その下が痛い場合は喉の奥というよりも甲状腺が痛んでいる場合があります。各種採血や画像診断で最終的に診断されるもので、すぐに診断のつく病気ではありませんが、カゼがいつまでも治らない、に加えて動悸・息切れ、何となくしんどい、といったプラスアルファの症状がある場合はこんな病気の場合がありますのでご注意を。