フレイルについて

フレイル、サルコペニア、ロコモ、こんな言葉を聞かれたことあると思います。

ともに加齢に伴う機能低下ですが、少し説明したいと思います。

フレイルとは「加齢により心身が老い衰えた状態」のことです。わかりやすくいえば健康な状態と要介護状態の中間の段階です。

サルコペニアとは加齢に伴い筋肉量が減少し、筋力や身体機能が低下した状態を指します。

ロコモとは、骨や関節、神経、筋肉などの運動器の衰えによって、立つ・歩くといった移動動作機能が低下した状態のことです。

サルコペニアは筋肉量や筋力が基準、ロコモはより広い運動障害を指します。

そして、フレイルは運動器だけでなく脳、その他の内臓など含めた全身の機能低下のことを指します。

フレイルの評価基準には5項目あり、3項目以上該当するとフレイル、1または2項目だけの場合にはフレイルの前段階であるプレフレイルと判断します。

1.     体重減少:意図しない年間4-5kgまたは5%以上の体重減少

2.     疲れやすい:何をするにも面倒だと週3-4日以上感じる

3.     歩行速度の低下

4.     握力の低下

5.     身体活動量の低下

フレイルには大きく3つの種類に分かれます

一つ目が「身体的フレイル」です。運動器の障害で移動機能が低下したり、筋肉が衰えたりするなどが代表的な例です。高齢期になると筋力は自然と低下していきます。

二つ目が「精神・心理的フレイル」です。高齢になり、定年退職や、パートナーを失ったりすることで引き起こされる、うつ状態や軽度の認知症の状態などを指します。

三つ目が「社会的フレイル」です。加齢に伴って社会とのつながりが希薄化することで生じる、独居や経済的困窮の状態などをいいます。

これらの3つのフレイルが連鎖していくことで、老い(自立度の低下)は急速に進みます。この連鎖はどこが入口になるかはその人次第。老いとは決して身体だけの問題だけではありません。

フレイルにはある程度「可逆性」もあり、自分の状態と向き合い、予防に取り組むことでその進行を緩やかにし、健康に過ごせていた状態に戻すことができます。いつかは寿命が尽きますが、できるだけ寝たきりの時間を短くし、楽しみながら健康寿命を延ばす努力をしましょう。

予防に掲げている柱は3つあります。

一つは、タンパク質をとりバランスよく食事をし、水分も十分に摂取するなどの「栄養」です。次に、歩いたり、筋トレをしたりするなどの「身体活動(運動)」。さらに就労や余暇活動、ボランティアなどに取り組む「社会参加」です。

もっと具体的に説明します。

その前に高齢者は様々な疾患をお持ちだと思います。脊柱管狭窄症、慢性心不全、癌など。病気の状態が悪い時には決して無理しないでください。どんな病気にもコントロールできている良い時期と何をしても悪化する時期があります。悪化している期間は主治医の先生と相談してしっかり治療をしてもらってください。

タンパク質は重要です。高齢者は歯が弱いのでやわらかい肉をしっかり食べましょう。その際高齢者は胃酸や消化酵素が不足しているのでサプリでも薬でも良いので消化酵素の補充や食欲の出る漢方、例えば六君子湯などを一緒に内服すればよいでしょう。

エネルギーを作る際に各種ビタミン・ミネラル、特にビタミンB群が必要です。食事では不十分なのでサプリでしっかり補充しましょう。糖尿病や腎臓病があるからといって制限は必要ありません。

それと、フレイルになりつつある方はいろんな病院から多種類の薬を処方されていることが多いです。昼間活動しないので夜眠れません、そこで睡眠薬を皆さん多用されます。出す医者の方も適当なもので、眠れないから睡眠薬、不安があると言われれば抗不安薬、うつっぽくなれば抗うつ剤。これらはフレイルにとって百害あって一利なしです。少々血糖値が高くても、コレステロールが高くても全く問題ありません。ただし血圧だけは高すぎると高齢者はすぐに心不全を起こすので注意してください。

食後は大きな声で発声練習。大声を出さなければ、か細い声しか出なくなります。何を言っているのか分からなくなってお互い困ります。嚥下機能も悪くなり、誤嚥性肺炎を起こしやすくなります。

その後は、例えばマンションであれば階段をゆっくり上ってください。決して無理はしないように、できれば誰かに付き添ってもらって、下りは必ずエレベーターで。コロナマスク?は必要最低限にしてくださいね。意味も分からずにマスクをされている方が非常に多いですから。二酸化炭素が溜まって特に高齢者にはよくありません。

社会参加はとても難しいものです。少し前のデータですが60歳以上の一人暮らしで会話するのが「2~3日に1回」以下なのは男性41%、女性32%。もちろんフレイルになりつつある高齢者は80歳以上が多いので、こんな割合ではありません。最近は少し相談すればすぐにデイサービスに連れて行ってくれます。ただし行きたがらない高齢者や、行っても誰とも話をしない高齢者は多いのです。事業所の方も何とかその方が興味を持てるような工夫をしていただいて、社会とのつながりを持っていただくことが重要です。

このようにフレイルの予防は栄養・身体活動・社会参加の三位一体です。フレイルの入り口は人それぞれだからこそ、一つの入り口からドミノ倒しのようにならないように、それぞれの予防に努めることが重要です。

コロナ4年目を迎えました。クリニックに来られるご高齢の方の中には、この3年間恐いので島から出たことない(当院は人工島にあるのでこんな言い方をされます)方々がおられ驚きます。動作は緩慢になり気持が塞ぎこんでいます。一方でトレーニングウェアで来られ、今から梅田にジムに行ってくる、と言われる80代の患者さんもおられます。わざわざ梅田まで行かなくても、とも思いますが。もちろんぜひ後者になっていただきたいものです。