癌になる前に検査しておこう

癌化と老化は似て非なるものです。染色体末端のテロメアが短くなって細胞が分裂できなくなったとき、細胞は老化します。癌遺伝子の活性化が起こってくると細胞増殖を引き起こす一方で老化を引き起こし増殖を止めようとする防御が働きます。癌細胞が増殖するには老化が阻害されているとも考えられています。細胞が老化して、次第に癌化するわけではなさそうです。

癌の家系でなくても喫煙、飲酒、環境因子などで癌は発生します。

でも、まずは自分の遺伝子を調べてみてどんな種類の癌にかかりやすいかをチェックしてみて下さい。サインポストがん遺伝子検査などで検査できます。

そこで自分のかかりやすい癌が、例えば肺がん、食道がんであればまず出来ることとして、禁煙、飲酒の節制を心がけましょう。胃がんであればピロリ菌の除菌をしてもらいましょう。

普通に暮らしていても、必ず口にする人工甘味料、保存料、歩いていても排気ガス、大気汚染は免れません。土壌汚染、古い水道管には有害重金属が含まれており、これらが我々のDNAを障害し、出来損ないの蛋白が合成され細胞の癌化につながります。

癌の早期発見には通常、画像診断を行います。胃カメラ・大腸カメラ、胸腹部CTを行うことで、頻度の高い癌はある程度発見できます。いまだに人間ドックで腫瘍マーカー測定を行うようですが、腫瘍マーカーでは進行癌はわかっても早期癌はわからないことがほとんどです。なおPETを組み合わせることで多少発見率は上がります。早期癌の状態で見つけれれば今の医療技術ではほぼ完治することができます。

ただし我々が求めているのは、画像に映る前の超早期癌、さらには癌そのものにならないことです。

癌細胞は1日約5000個誕生しますが、免疫細胞で退治されます。癌細胞の増殖力が強ければやがて巣を作ります。1mm以上の大きさになった癌細胞の塊は内皮間葉転換を起こし血管内に流れ出し、遠隔転移を始める準備を整えていきます。(まだこの段階では転移するほどではありません)この血液中に流れてきている癌細胞をカウントするのがCTC(循環腫瘍細胞)検査です。CTC検査でゼロであればまず大丈夫、癌の種類によって幾つ以下は経過観察、という指標があります。もともとこの検査は早期癌を切除した後に、再発をごく早期に発見するためのものでした。最近では健常者が検査することで癌がないかどうかを調べることが出来ます。
私も毎年年末にCTCを調べています。そろそろ調べる時期がやってきました。陰性なら1年間元気で働けそうです。

最近TAQ検査というものがあります。テロメア合成酵素(テロメレース)活性を測定するものです。テロメアとは染色体(DNA)の末端にあり細胞分裂により徐々に短くなっていきます。そしてテロメアがなくなった時、DNAは操業停止となり老化します。テロメレースはテロメアが短くなったときに無理やり延ばすために活性化する酵素です。通常では異常な増殖性を持った細胞が癌化するのを防ぐため活性が低いのですが、癌細胞ではたいていテロメレース活性が増加しています。

血液中に存在するヒトテロメア逆転写酵素(hTERT) のmRNAを用いてテロメレース活性、その他のがん関連のマーカーを測定し、さらに免疫関連のmRNAマーカーを組み合わせた検査がTAQ検査です。
現時点で癌増殖の方向に働いているかどうか、あるいはステージ0の癌と診断される前段階の予知・早期発見の指標となる検査です。健常の方が繰り返し行うことでサプリメント効果を判定することもできます。

当院でも今後導入する予定です。
通常の画像診断以外は健康保険は効きませんが、癌になる前にやっておきたい検査が他にも色々あるんです。