テストステロンは足りてますか?

テストステロンは男性だけのホルモンではなく女性にも必要なホルモンです。今回は男性のテストステロンの話です。

テストステロンは主に精巣で作られ(女性は卵巣)、副腎でも少しだけ作られます。年齢とともに緩やかに低下して50代でピークの約半分まで低下します。
役割としては、筋肉量増加、運動能力改善、記憶力改善、健康の実感、精神状態の改善、骨密度増加、コレステロール値の低下、インスリン抵抗性改善、性機能の改善、治癒力向上、など男性として生きていくうえで非常に重要なホルモンです。その他認知症予防(女性におけるエストロゲンと同じ機能)、内皮機能改善、動脈硬化性疾患の予防といった役割もあります。ただしスポーツ選手などが筋力増強のためにむやみに補充することは厳しく規制されています。

やる気がない、眠れない、イライラする、といった症状がある50代以降の男性は初老期うつ病と診断されていたかもしれません。また同時に筋肉が落ちてきた、歩くのが遅くなってきた、お腹がでてきた、といった症状もみられるでしょう。そのような方に血液検査で遊離テストステロンを測って低値であればLOH症候群と診断されます。ただし保険適応ではテストステロン補充のための筋肉注射を2週間に1回行うのが治療です。注射剤ではテストステロンの血中濃度が一定にならず、多血症(ヘモグロビンが多すぎること)、肝障害、コレステロール上昇(合成テストステロンの場合)がみられることがあります。

さて、これから目指したいのはテストステロンを補充して健康な男性がさらに健康になることです。目指すことは、QOL改善、心臓病リスクの低下、インスリン抵抗性改善、記憶力・認識力の改善なのです。遊離テストステロンを測ってみましょう。朝の採血で12.5pg/ml以下なら赤信号、病気の部類に入ります。16pg/ml以上あれば安心です。でも目指すべきは、皆さんが25~30歳でわくわくしていた頃の値30~40pg/mlが最適値なのです。ちなみに50代半ばの私は何度か測って18~22pg/mlでした。
年齢とともに自然に低下するから仕方ない、と考えるのか、若いころの元気を取り戻すために補充するかは考え方次第です。

テストステロン補充はクリームで行います。(治療でないのでもちろん健康保険は効きません)1日2回、朝と夜に塗ります。クリーム剤は経皮吸収され安定した血中濃度が得られます。時々採血してテストステロン値を測りながら若いころの元気さを取り戻しましょう。注意点は間違って周りの人、特に子供につけないことです。それと少し薄毛になることがあります。それと禁忌は前立腺癌患者(現在前立腺癌があることがわかっている)です。

ホルモン補充というと癌は大丈夫か、と言われそうですが、テストステロンが前立腺癌の原因になるという証拠はありません。むしろ前立腺癌は人生でテストステロンレベルが減少する、ちょうどその時に発生率が高くなるとされています。ですのであらかじめ血中PSA値を測定して前立腺癌の可能性が低ければホルモン補充をすることは問題ないのです。
長い人生です。心身ともに、より健康で過ごすためにできることは何でもやりましょう。