女性を守るエストロゲン

エストロゲンは主に卵巣から分泌され、40代半ばから急激に低下します。その結果、気分のむら、うつ症状、肌、乳房のたるみ、顔のシワの増加、性欲減退などが出てきます。これらをひとまとめに更年期障害というのですが、エストロゲンにはもっと大切な役割があります。女性がさらに年をとった時、その時期に心臓病、脳卒中、骨粗鬆症、認知機能低下から女性を守るのです。

閉経前の女性は特殊な状況を除いて、まず心筋梗塞になりませんが、閉経後10年を過ぎたあたりから増加してきます。また閉経後は一気に骨粗鬆症が進みます。これらは男性にはない変化です。

閉経後、心筋梗塞や脳梗塞などの動脈硬化疾患、あるいは骨粗鬆症の恐れがでてきたときには大抵、コレステロールを下げる薬、血液をさらさらにする薬、骨吸収を抑える薬などが処方されます。それでもいいのですが、その前にしっかりエストロゲンを補充することが重要です。

エストロゲンにはE1(エストロン)、E2(エストラジオール)、E3(エストリオール)の3種類があります。E3には肌、更年期障害への作用はありますが、心臓や骨の保護効果はありません。E2(エストラジオール)が主要な活性エストロゲンで健康にメリットがあるのです。

一般的には保険診療では更年期障害に対してエストロゲン(およびプロゲステロン)を投与しますが、これらの薬剤は合成ホルモンです。合成ホルモンは天然のホルモンと異なり化学構造式、代謝経路、時間が違うので様々な副作用があります。例えばプレマリンは馬の尿からつくられる合成ホルモンで、血栓症のリスクも上がります。

女性を守るエストロゲン投与は更年期障害(一応の基準12カ月以上月経が中止、FSH>50&LH>30)に対して症状軽減のために投与すること、その後の心血管合併症・骨粗鬆症の予防に投与すること、の2つの目的があります。重要な目的は後者です。
そしてもちろん天然(バイオアイデンティカル)ホルモンを用います。プロゲステロンとのバランスをとりながらE2(エストラジオール1-2mg単独補充が基本ですが、エストリオール0.1mg程度を含むものでもよさそうです。そして血中濃度を測定しながら最適値を保つように長期にわたって補充します。

女性に対する更年期以降の長期にわたる天然のエストロゲン補充は、やがて起こるであろう心血管系疾患、骨粗鬆症、認知機能低下から女性を守るのです。