心筋梗塞と循環器内科医

心筋梗塞とは、心臓の表面にある冠動脈が急に詰まっておこる病気です。突然死の原因となる重要な病気です。正確には急性心筋梗塞、我々は急性冠症候群と呼んでます。

冠動脈内に動脈硬化プラークができて、ある時突然プラーク内から出血し、冠動脈を詰まらせます。詰まった先には血液がいかないので、心筋が壊死し、それに伴い致死性の不整脈が起こり命を落とすことがあります。

今朝から少し動くだけで胸が苦しい、といった何らかの前ぶれがあり、その時点で病院に行けばラッキーなのですが、多くは突然の胸痛発作で起こります。健康診断で心電図異常なし、と言われていた方も、昨日病院で血圧の薬をもらった人も。

日本は米国と比べて心筋梗塞の患者数は1/3程度と少ないのですが、それでも心筋梗塞を発症後、1/3~1/4の方は病院到着前に死亡します。ただし病院にたどり着いたら救命率は約95%です。日本の心筋梗塞死亡率は人口対比で世界中で最も低いのです。それには手前味噌ながら、我々循環器内科医の並々ならぬ努力があるのです。

突然の胸痛があり救急車を呼ぶと病院に連れていかれます。そこで心筋梗塞と診断されると様々な説明・処置・検査ののち、血管造影室で手首あるいは足の付け根からカテーテルをいれて冠動脈の詰まった部分にステントという金属を留置します。それにより冠動脈の詰まった部分で血流が再開し、治療成功となります。ここまで、病院に到着してからわずか1時間ちょっとです。

心筋梗塞の治療では、病院到着後ステント留置まで(Door to Baloon timeと呼びますが)90分以内、できれば60分以内が求められます。病院に心筋梗塞の患者さんが来られたら、とにかく素早く進めます。そうすることにより心筋梗塞での救命率を上げることができ、患者さんが元気に退院することができるのです。

心筋梗塞を含め突然死を起こす病気に対して、現場の医師は24時間体制で臨んでいます。少し病院の事情をお話しすると、大きなセンターでない限り夜間・休日に素早くカテーテルができる医師や心臓手術ができる医師が常にいるわけでは決してありません。
どうするかというと、「心筋梗塞の患者さんが来ました」、と当直医や看護師から連絡があると夜間・休日にかかわらずダッシュして家から、救急外来や血管造影室に向かいます。そうすることで、患者さんの病院到着時からステント留置、詰まった血流の再開まで90分あるいはもっと厳しい60分が達成できるのです。そして深夜・休日であっても短時間で治療が成功して、その後患者さんが元気になる姿をみて、我々にも大きな達成感が得られるのです。

突然の胸痛があれば我慢せず救急車を呼んで病院に行ってくださいね。


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