睡眠に対する何らかの障害があり、昼間・日中に異常に眠たくなってしまうという症状で当院にご相談にいらっしゃる方が多くおられます。患者様によって症状は様々ですが、ここでは「昼間にいつも眠たくなってしまう」、「日中眠たくて、仕事などに集中できない」といった悩みのある方へ、考えられる原因や疾患、またどのような検査・治療を行っていく必要があるかをお伝えします。
昼間の耐え難い眠気、日中に異常に眠たい原因として最も多く考えられるのが、当ホームページでお伝えしている睡眠時無呼吸症候群です。
睡眠時無呼吸症候群とは、眠っている間に無呼吸状態（呼吸が止まっている状態）が繰り返される病気です。
医学的には10秒以上の呼吸停止状態を「無呼吸」と定義し、無呼吸が1時間あたり5回以上、または一晩（7時間の睡眠中）に30回以上あれば、睡眠時無呼吸症候群と診断されます。
ただこの無呼吸状態は寝ている間のことなので、なかなか本人は気付くことができません。このことから検査や治療を受けていない方が多く、日本でも300万人～400万人の潜在的な患者さんがいるといわれています。
睡眠時無呼吸症候群は治療法が確立されているため、適切に検査・治療を行えば決して恐い病気ではありませんが、放っておくと高血圧や心筋梗塞、脳卒中、糖尿病などにつながるリスクがあります。
当院でも昼間・日中の耐え難い眠気で悩まれている患者様の相談をお受けした場合は問診を行い、睡眠時無呼吸症候群が疑われたときは自宅でできる簡易検査を実施して適切な診断と治療を実施しております。
日中に過剰な眠気を感じ、日常生活に支障をきたす状態をさします。疾患としては、大きく「ナルコレプシー」「突発性過眠症」といったものがあります。
ナルコレプシーとは、突然発作的に襲ってくる耐え難い眠気が日に数回もあり、勉強や仕事に支障をきたす疾患です。症状としては非常に強い日中の眠気（睡眠発作）だけでなく、興奮した時に体の力が抜けてしまう“情動脱力発作”や、金縛りなどを引き起こすこともあります。特に症状がひどい場合は、眠ることに対して恐怖を感じてしまうような場合もあります。
突発性過眠症はナルコレプシーと異なり、一日中眠気が続くことが特徴です。
こういった症状に対する検査は、アクティグラフ、睡眠時ポリグラフ検査（PSG）、反復睡眠潜時検査（MSL）などがあります。
診断は問診と検査結果によって行われ、ナルコプレシー1型、2型、特発性仮眠症を分類し、治療を行います。治療は基本的に薬物療法となります。
睡眠障害としては比較的稀な病気と言われています。10歳代という若い年代で発症することが多いと報告されており、男性の方が女性よりも発症率が高いとされています。
1年を通して1回以上（3ヶ月に1回程度）3日～5週間程度、強い眠気を感じ毎日16～20時間眠り続けてしまうという病気です。
この病気はいまだ原因が明確になっておらず、治療方法も確立されていません。過眠の症状が出てしまうと治療することが難しくなってしまうため、上記の症状が出ないよう「予防」のための薬物療法を実施します。
また睡眠不足などが原因となって過眠症期になってしまうことがあるので、規則正しい生活を送ることが大切な予防になります。症状は期間が経過するにつれ自然に治まってくる事が多いですが非常に長期間かかる（平均で14年間程度と報告）とされています。
「うつ病」は、最近耳にされることが多い病気ではないでしょうか。うつ病を発症する患者様は近年増加傾向にあり、誰にとっても注意が必要な病気だと認識されてきています。
うつ病の代表的な症状はとしては、気分が沈む、落ち込む、ということがあります。これは嫌なことや悲しいことがあって一時的に落ち込むというものではなく、言葉で表現できないほど沈んだ気分になって何事にも興味や喜びを感じなくなり、ほぼ毎日、一日中その状態が続くことで日常生活に支障をきたしてしまう病気です。
などが症状として挙げられます。
昼間の眠気以外に上記の症状がみられる場合には、専門の医療機関に相談されることをお勧めします。
PMS（月経前症候群）とは、月経前の3日～10日の間、精神的・身体的に様々な症状が現れ、月経が開始すると軽快または消失する病気です。原因は女性ホルモンの変動と関連があるとされていますが、まだ明確に解明されていません。
などが主な症状として現れます。
症状が軽度な場合は日常生活の改善（食事療法）などによって改善を目指しますが、必要に応じて薬物療法を行う場合があります。
特に症状が重い場合には、専門の医療機関にご相談されることをお勧めします。
昼間や日中の耐え難い眠気がある場合には上記の疾患の可能性がありますので、適切な医療機関にかかり考えられる原因・疾患を特定する必要があります。
中でも睡眠時無呼吸症候群に関しては原因の疾患となっている場合が多いですので、まずは睡眠時無呼吸症候群の簡易検査を実施している近隣の医療機関をお探しください。以下に一般的な診断・治療の流れをご説明します。
医療機関で問診を受け、睡眠時無呼吸症候群の疑いがあった場合、睡眠中の状況を把握するために自宅での簡易検査を行います。手や指にセンサーを装着し、無呼吸による低酸素状態を測定する検査と、鼻に呼吸センサーを装着して気流やいびきを測定する検査があります。
検査装置は手首式血圧計を少し大きくした程度の大きさで、センサーをつける以外は普段と同じように寝ていれば測定できる検査ですので、仕事や日常生活など、普段と変わらず過ごすことができます。
【参考】
上記の簡易検査で睡眠時無呼吸症候群であると診断できず、より精密な検査が必要であると判断された場合には、基本的には病院で１泊２日のPSG検査（ポリソムノグラフィー検査）を行います。
これは簡易検査よりもさらに詳しく、睡眠と呼吸の「質」の状態を調べる検査です。入院とは言いましたが、実際には仕事などへの支障が出ないよう、仕事終わりの夜に入院して検査をし、翌朝出勤前に退院できるよう配慮されている医療機関も多くあります。
この検査では、口と鼻の気流、血中の酸素飽和度、胸部・腹部の換気運動、筋電図、眼電図、脳派、心電図、いびきの音、睡眠時の姿勢など、非常に幅広い項目を調べます。これらの項目を測定するために身体に多くのセンサーをつけますが、痛みを伴うような検査ではなく、簡易検査と同じく寝ている間に検査は終了します。
またどうしても入院による検査が難しい場合、少し精度は落ちますが自宅に検査機器を郵送してもらい、ご自身でセンサーをつけて一晩眠り、翌日検査機器を送り返す、という在宅でのPSG検査を紹介している医療機関もあります。
睡眠時無呼吸症候群と診断された方は、治療が必要となります。
一般的には「CPAP（シーパップ）治療」と呼ばれる、睡眠時に専用のマスクを装着し、エアチューブで鼻から上気道に空気を送り続ける装置を使う治療法が多く選択されます。
また、軽度な睡眠時無呼吸症候群だと診断された方には、症状が悪化しないようにするためにも下記のような改善内容をご説明します。
上記でご説明したナルコレプシー、反復性過眠症、特発性過眠症、うつ病、PMS（月経前症候群）などといった疾患が考えられる場合、より専門的な詳しい検査が必要です。
当院では、問診と必要に応じて実施する簡易検査の結果をもとに疾患を想定し、それぞれの疾患が治療できる専門の医療機関をご紹介します。
上記でご説明したように、昼間に異常に眠たくなる、日中眠くて集中できないなどの悩みをお持ちの方は、ご自身で判断せずにまずは医療機関にて検査を受けられることをお勧めします。睡眠の問題は患者様の生活の質（QOL）を低下させてしまうだけではなく、重症化すると交通事故や思わぬトラブルを引き起こしてしまうリスクがあります。症状が徐々に進行していくために、気になってはいるものの医療機関を受診することを先延ばしにされている方も多いと思いますが、大きな問題が引き起こされてしまう前に原因を特定し、悩みを改善するようにしましょう。
