睡眠時無呼吸症候群(SAS)がなぜ悪いのか|神戸市東灘区 睡眠時無呼吸症候群 神戸ベイSAS相談所

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睡眠時無呼吸症候群(SAS)がなぜ悪いのか

SASを含めた生活習慣病の治療について

生活習慣病の診療をしていると、時々ご高齢の方でたくさんのお薬を飲んでおられ、自分が何の病気かをご存知ない方がいらっしゃることがあります。これでは何のために治療をしているのか、何のために忙しい時間をやりくりして通院しているのか、分からなくなってしまいます。
これは、通っている医療機関、医師の責任です。当院では絶対にそのようなことはしません。なぜ今この治療をしているのか、なぜこの薬が必要なのか、治療の目的は何なのか、を必ずしっかりとお伝えします。

睡眠時無呼吸症候群(以下SAS)の治療についても同じです。
SASは自覚症状の乏しい病気ですのでなかなか治療の成果が見えづらく、定期的に通院するモチベーションが保ちづらいという方もいらっしゃいます。
SASの治療していくうえで重要なことは、治療によって何のメリットがあるのか、治療をしないとどのようなデメリットがあるのかを、ご本人がしっかりと把握しておくことです。

睡眠時無呼吸症候群(SAS)によって引き起こされる症状

①日中のパフォーマンス低下

SASを治療せず放っておくリスクのひとつに、「睡眠の質」が低下することによって引き起こされる日中の活動への影響があります。これには日中の強い眠気や倦怠感、集中力・判断力の低下などが挙げられます。これは疲れが溜まっているだけ、などといって安易に見逃されがちですが、決して軽いものではありません。

元々日本では、2003年2月に起きた新幹線の居眠り運転によってSASが注目を浴びるようになりました。新幹線の走行中に運転手が約8分も居眠り運転をしており、新幹線が急停車したというものです。なんと運転手は停止したことにも気づかず居眠りを続けていたそうです。その後も2012年の群馬県の関越自動車道で起きたスキーツアーバスの事故(死者7名、重軽傷38名)や、最近では2018年10月に横浜市で起こった路線バスの事故(死傷者7名)なども記憶に新しいかと思います。これらは全て、運転手がSASであったとの検証結果が出ています。

もちろん、恐ろしいのは運転中の事故だけではありません。製造業の工場で機械を扱っている方、緻密な作業を要求される仕事をされている方など、日中のパフォーマンスが落ちてしまうことで様々な損失が起こってしまい、時には生命の危機に陥ってしまうこともあるのです。
「日中の眠気」や「集中力の低下」というと、「だらしがない」「気合が足りない」といったことを言われる場合もあるかも知れません。しかし事故が起こってしまってからでは遅いのです。取り返しのつかない事態になる前に、病気の可能性も含めてご自身のことをしっかりと把握しておくことが大切です。

②生活習慣病の合併

SAS、特に閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)は様々な生活習慣病を合併します。これは、睡眠中に発生する無呼吸によって血液中の酸素濃度が下がることが原因です。この酸素濃度の低下は「呼吸不全」と同程度の状態であり、当然身体にとっては非常事態です。

こうなると心臓は体中に充分な酸素を供給しようと心拍数・血圧を上昇させます。言い換えれば、日中に運動をしている時と同じような負担が心臓にかかるわけです。
こうした非常事態が毎晩、一時間に何回も、放っておくと何年間も繰り返されるわけですから、心臓に蓄積する負担ははかり知れません。こうして蓄積した負担が、様々な生活習慣病を引き起こしてしまうのです。

高血圧

SASであること自体が、高血圧の原因となります。SASの患者さんの50%に高血圧が認められ、高血圧の患者さんの30%にSASが認められるとの報告があります。研究結果によれば、SASであることが高血圧のリスクを約2倍に押し上げるとされています。
特に薬を飲んでもなかなか血圧が下がらない「薬剤耐性高血圧症」の場合、約80%でSASが見られることが分かっています。

心不全

SASは心臓に負担をかけ、心機能を低下させる可能性があります。実際、心不全患者さんの約11%はSASを合併していることが報告されています。研究によれば、SASを合併している心不全患者さんでは、SASを治療しないと死亡率が2~3倍高くなることも分かっています。

不整脈

SAS患者さんは、無呼吸・低呼吸指数の増加や低酸素血症の悪化に伴い、不整脈の合併率が高まります。
睡眠中によく認められるのは、心房細動、非持続性心室頻拍、洞停止、2度房室ブロック、心室性期外収縮などの不整脈です。重度のSASでは夜間の不整脈の発症リスクが2~4倍高まることが明らかになっており、SAS患者さんの約半数に何らかの不整脈があると言われています。

虚血性心疾患(狭心症・心筋梗塞)

冠動脈に疾患のある患者さんでSASを合併する割合は、疾患がない場合の約2倍です。また健康な人と比較した場合、SAS患者さんの虚血性心疾患の発症リスクは約2~3倍と報告されています。スペインでの研究によると、無治療の重症SAS患者群の心筋梗塞、もしくは脳卒中による死亡率は、健康な人と比べると約3倍に達することがわかりました。

睡眠時無呼吸症候群(SAS)の治療目的とは

ここまでご説明した通り、SASは自覚症状に乏しいにも関わらず放っておくと非常に危険な病気であることがお分かりいただけたかと思います。つまりSAS治療は、睡眠中の無呼吸状態を防ぐことで、取り返しのつかない事故や合併症を未然に防ぐことが目的です。

本来睡眠とは身体を休めるためのものにも関わらず、SASの患者さんは睡眠中にどんどん身体に負荷をかけ続けてしまっている状態なのです。
最近になって睡眠の重要性が広く周知されるようになってきましたが、まだまだSASについては気付いていない、治療を受けていない方がたくさんいらっしゃいます。
ご家族、パートナーや周りの方からいびきの指摘を受けたり、少しでも思い当たることがあれば、まずは専門の医療機関に受診ください。また逆に周りに気になる方がいらっしゃれば、ぜひ受診をお勧めください。これが、取り返しのつかない事故や合併症を未然に防ぐ第一歩となるのです。

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