運転中の眠気は居眠り運転を招き、重大な交通事故を引き起こしてしまう原因となります。居眠り運転を招いてしまうほどの運転中の眠気を引き起こしてしまう原因には様々なものがあり、睡眠時無呼吸症候群、睡眠不足、疲れが取れないほどの重労働、飲んでいる薬の副作用、不規則な生活習慣、運転する時間帯などが考えられます。ここでは、運転中の眠気によって日常生活や仕事で不安、心配を感じている方へ、どのように改善を行っていくべきかをお伝えします。
居眠り運転、運転中の眠気の原因として睡眠の質から考えられるのが、当ホームページでお伝えしている睡眠時無呼吸症候群です。
睡眠時無呼吸症候群とは、眠っている間に無呼吸状態(呼吸が止まっている状態)が繰り返される病気です。
医学的には10秒以上の呼吸停止状態を「無呼吸」と定義し、無呼吸が1時間あたり5回以上、または一晩(7時間の睡眠中)に30回以上あれば、睡眠時無呼吸症候群と診断されます。
ただこの無呼吸状態は寝ている間のことなので、なかなか本人は気付くことができません。このことから検査や治療を受けていない方が多く、日本でも300万人~400万人の潜在的な患者さんがいるといわれています。
睡眠時無呼吸症候群は治療法が確立されているため、適切に検査・治療を行えば決して恐い病気ではありませんが、放っておくと高血圧や心筋梗塞、脳卒中、糖尿病などにつながるリスクがあります。
また睡眠時無呼吸症候群によってもたらされる日中の耐え難い眠気は、居眠り運転を招き重大な交通事故を引き起こしてしまうリスクがあります。
以下に、睡眠時無呼吸症候群が原因となって引き起こされたことが判明している事故をお示しします。
いずれの事故も運転していた人が元々睡眠時無呼吸症候群であることが分かっていた、あるいは事故後の検査で睡眠時無呼吸症候群であることが判明したものです。
このように睡眠時無呼吸症候群は適切な治療がされずに放置されていると、重大な事故を招きかねないということがお分かりいただけるかと思います。
当院でも運転中に襲われる耐え難い眠気で悩まれている患者様の相談をお受けした場合は問診を行い、睡眠時無呼吸症候群が疑われたときは自宅でできる簡易検査を実施して適切な診断と治療を実施しております。
風邪や花粉症といった病気の治療で飲むお薬(抗ヒスタミン薬)の副作用として眠気が生じ、運転中に眠気が襲ってくることがあります。このような薬を飲んだ後は、可能な限り車の運転を控えていただくことが望ましいです。
ただ実際には、お仕事などの都合でどうしても運転する必要がある方もいらっしゃると思います。
近年は眠気の副作用が出現しにくい抗ヒスタミン薬も開発されていますので、医師にご相談ください。
お仕事や生活の都合上、どうしても疲れが過度に溜まった状態や多少の病気であっても車を運転しなければならず、運転中に眠気が襲ってくることがあると思います。また、深夜に運転しなければならない方もいらっしゃるでしょう。様々な都合はご本人ではどうしようもないことも多いですが、運転中に眠気を感じたら、交通事故のリスクを回避するために必ず仮眠を取るようにしてください。これは運転するご本人しか対処ができないことです。
【参考】
居眠り運転の交通事故では、安全運転義務違反と過労運転がありますが、その違反点数は、安全運転義務違反(2点)、過労運転(25点)となっており過労運転の方が重罪となります。
【対処方法】
など
過度な疲れが溜まらないよう睡眠をしっかりと取っている、また眠気の副作用が出るような薬を服用していないにも関わらず運転中に眠気が襲ってくる場合、睡眠時無呼吸症候群の可能性が考えられます。まずは睡眠時無呼吸症候群の簡易検査を実施している近隣の医療機関をお探しください。以下に一般的な診断・治療の流れをご説明します。
医療機関で問診を受け、睡眠時無呼吸症候群の疑いがあった場合、睡眠中の状況を把握するために自宅での簡易検査を行います。手や指にセンサーを装着し、無呼吸による低酸素状態を測定する検査と、鼻に呼吸センサーを装着して気流やいびきを測定する検査があります。検査装置は手首式血圧計を少し大きくした程度の大きさで、センサーをつける以外は普段と同じように寝ていれば測定できる検査ですので、仕事や日常生活など、普段と変わらず過ごすことができます。
【参考】
上記の簡易検査で睡眠時無呼吸症候群であると診断できず、より精密な検査が必要であると判断された場合には、基本的には病院で1泊2日のPSG検査(ポリソムノグラフィー検査)を行います。
これは簡易検査よりもさらに詳しく、睡眠と呼吸の「質」の状態を調べる検査です。入院とは言いましたが、実際には仕事などへの支障が出ないよう、仕事終わりの夜に入院して検査をし、翌朝出勤前に退院できるよう配慮されている医療機関も多くあります。
この検査では、口と鼻の気流、血中の酸素飽和度、胸部・腹部の換気運動、筋電図、眼電図、脳派、心電図、いびきの音、睡眠時の姿勢など、非常に幅広い項目を調べます。これらの項目を測定するために身体に多くのセンサーをつけますが、痛みを伴うような検査ではなく、簡易検査と同じく寝ている間に検査は終了します。
またどうしても入院による検査が難しい場合、少し精度は落ちますが自宅に検査機器を郵送してもらい、ご自身でセンサーをつけて一晩眠り、翌日検査機器を送り返す、という在宅でのPSG検査を紹介している医療機関もあります。
睡眠時無呼吸症候群と診断された方は、治療が必要となります。
一般的には「CPAP(シーパップ)治療」と呼ばれる、睡眠時に専用のマスクを装着し、エアチューブで鼻から上気道に空気を送り続ける装置を使う治療法が多く選択されます。
また、軽度な睡眠時無呼吸症候群だと診断された方には、症状が悪化しないようにするためにも下記のような改善内容をご説明します。
お伝えしたように、居眠り運転を引き起こしてしまいかねないほどの耐え難い眠気が運転中にある場合、まずはしっかりとした睡眠や日常生活、運転する際の体調管理など、ご自身でできる範囲で改善を心がけましょう。それでも症状が改善しない場合、睡眠時無呼吸症候群について、お早めに専門の医療機関を受診することをお勧めします。普段から気になってはいるものの、医療機関へ受診することを先延ばしにされていらっしゃる方も多いと思いますが、交通事故など重大な問題を引き起こしてしまう前に原因を特定し、改善するようにしましょう。